理学療法士が養成校の教員求人へ転職する方法とポイント、年収

理学療法士(PT)の中には、理学療法士養成校の教員として転職したいと考えている人は多いです。教員は学生指導など臨床とは違ったやりがいがある上に、病院と比較すると給料・年収が高い傾向にあるためです。

ただ、一言で養成校教員といっても、大学と専門学校では応募できる条件が異なります。専門学校は臨床経験が5年あれば転職できますが、大学教員は学位(学士や修士、博士)を取得していないとなれないのです。

また大学教員と専門学校教員では、求人の探し方も違います。専門学校の教員求人は求人サイトや転職サイトにも掲載されていますが、大学は公式HP(ホームページ)での公募が一般的です。

理学療法士の教員として転職するときには、こうした教員ならではの注意点を理解しておくことが大切になります。

そこで今回は「理学療法士が養成校の教員求人へ転職する方法とポイント、年収」について解説します。

もくじ

理学療法士の養成校教員になる条件とは

理学療法士の教員で働く場としては、専門学校と大学という2つの選択肢があります。ただ、どちらも就職するためには満たさなければいけない条件があります。

専門学校でも大学であっても、理学療法士の教員として必要になる条件としては「理学療法士の免許を取得していること」「理学療法士としての臨床経験が5年以上であること」の2つが挙げられます。これらは、教員として働くための基本となります。

例えば以下は、千葉にある専門学校の理学療法士教員求人です。

求人にあるように、理学療法士の臨床実務5年があれば教員免許は必要ありません。ただ理学療法士として臨床経験が5年に満たない人は、どれだけ能力が高くても教員として勤めることはできません。

また専門学校の場合は、先に挙げた2つの条件を満たしていれば教員として転職することができます。その一方で大学となると、それだけでは就職することができません。

大学の教員として働く場合は2つの条件に加えて「学位」を取得していることが必要になります。具体的には助教授であれば学士以上、講師や准教授では修士以上、教授は博士以上の学位を持っていることが求められます。

つまり、専門学校を卒業しただけでは大学教員として働くことはできません。専門学校では学位を取ることができないためです。学士を取るには大学を卒業し、修士や博士を取得するためには大学院で修士、博士課程を修了しなければいけません。

大学教員として働くためには、最低でも大学を卒業する必要があるのです。例えば以下は、理学療法士の大学教員における助教授の募集求人になります。

この求人では、助教授ですが修士以上の学位が求められています。つまり、この求人は大学院を卒業している人しか応募できないのです。実際に大学の助教授の大半は修士以上の学位をもっているため、求人では修士以上が募集要件となっていることが多い傾向にあります。

このように理学療法士養成校の教員として働きたいと考えている場合には、以上のような条件が求められることを理解しておいてください。

大学と専門学校における教員求人の違い

先に述べたように理学療法士の養成校教員には、主に大学と専門学校の2つがあります。教員へ転職するときには、どちらへ転職したいかで探し方が変わってきます。それぞれで募集の仕方が異なっているためです。

そのため、大学と専門学校における求人の違いについて理解しておくことが大切になります。そこで以下に、大学教員と専門学校教員における求人方法の違いについて記します。

大学教員の理学療法士求人は公式HPによる公募

大学教員の理学療法士求人は、基本的に大学の公式HP(ホームページ)上での公募になります。求人サイトや転職サイトに大学教員の求人はほぼありません。そのため大学教員へ転職したのであれば、公式HPの募集を見つける必要があります。

例えば以下は、愛知県にある大学のHP上に掲載された理学療法士求人です。

求人にあるように、准教授と講師、助手、教授というように立場別で公募がされています。このように、基本的に大学教員の求人は公式HP上で募集されます。

また「JREC-IN Portal – 国立研究開発法人 科学技術振興機構」には、大学教員の公募に関する情報がまとめられています。以下はJREC-IN Portalのトップ画面です。

職種や勤務先、種類(国立大学、私立大学など)を入力することで、条件に合った求人が検出されます。例えば以下は、JREC-IN Portalで検索してでてきた大学教員の理学療法士求人です。

ここから大学の公式HP上にある求人情報のページを見て、応募をするのです。

このように理学療法士の大学求人を探すときには、公式HPで募集されている求人を見つけるか、JREC-IN Portalで検索するようにしましょう。

専門学校教員は求人サイトでの公募もある

大学教員が公式HPで公募されている一方で、専門学校の理学療法士教員は一般の病院求人と同じように求人サイトや転職サイトで公募されています。

例えば以下は、宮城県にある専門学校の転職サイトに掲載されている理学療法士求人です。

この求人のように、専門学校教員の理学療法士求人は数が少ないものの公募もあります。

専門学校教員における理学療法士は、卒業生から選出されたり教員の紹介で就職が決まったりことが多いです。これが専門学校教員の求人数が少ない理由の一つになります。

つまり、専門学校の教員は公募ではなく紹介という方法が多いのです。

このように一言で養成校教員の求人といっても、大学教員と専門学校教員では求人の探し方が全く違うことを知っておきましょう。

転職サイトには専門学校教員の求人もある

公募での求人を見つけたいのであれば自分で検索する求人サイトではなく、求人を紹介してもらえる転職サイトになります。転職サイトは求人サイトにない教員の求人を抱えているため、求人サイトと比較すると圧倒的に求人数が多いためです。

求人サイトで検索するとわかりますが、専門学校教員の求人はほぼありません。その一方で転職サイトであれば、求人数自体は多くありませんが求人は見つかります。

例えば以下は、東京にある専門学校養成校教員の理学療法士求人になります。

転職サイトであれば、こうした貴重な教員の求人が掲載されています。これは転職サイトが学校と求職者の間に転職エージェントを介しているためです。

専門学校の教員は臨床経験が5年以上であるだけでなく、学生指導や教育に熱意が必要になります。学生の指導は思った以上に大変であり、熱意がなければ難しいからです。そのため、学校は病院以上に採用する人材を選別しているのです。

紹介でが多いのは、紹介の方が信頼できる人材が集まる可能性が高いからです。

転職サイトであれば、エージェントが間に入って学校側が望む条件を満たす応募者だけを選別して紹介してくれます。つまり、転職サイトを介することで人材の選別ができるのです。

こうした理由から、専門学校教員の公募は求人サイトではなく転職サイトが使われます。

理学療法士の養成校教員で採用されるポイント

理学療法士の養成校教員として働くためには、採用されるポイントを押さえておかなければいけません。教員として採用されるためには大学と専門学校で注意すべきポイントが異なります。

そこで以下に、理学療法士の養成校教員として採用されるポイントについて記します。

専門学校教員採用は熱意と社会的信頼がポイント

理学療法士の専門学校教員として採用されるためには、いくつか押さえておくべきポイントがあります。

例えば、教員として働くためには教育に対する熱意が求められます。そのため、履歴書や面接で教育に対する熱意を示さないと採用されません。

また先に述べたように専門学校の教員には、その専門学校を卒業生した人の中から選考したり、専門学校の関係者とつながりがある人や対外的に臨床での評判が高い人などから選ばれたりすることが多いです。

つまり、社会的信頼が高いと転職が成功しやすいといえます。

例えば、専門学校の非常勤講師を引き受けたりすることで社会的な信頼を高めることができます。また講習会などに積極的に参加し、専門学校の関係者と交流を持つことは人脈形成にも社会的信頼の獲得にもつながります。

こうした病院以外での積極的な活動を行って社会的信頼を高めることが、専門学校の教員として採用されるポイントになってくるのです。

このように、理学療法士養成専門学校における教員として働きたい場合は、対外的な活動を行っていくことが大切になります。

大学教員は研究実績が採用の鍵となる

一方で大学教員の場合専門学校と異なり研究実績が重視されます。そのためつながりやセミナーなどの活動ではなく、客観的に評価されるような業績を残していることが重要になります。

例えば、「どのような学会で研究を発表してきたか?」「どれだけの数の研究を行ってきたか?」などは、評価されるポイントとなります。以下は、ある大学の理学療法学科の求人です。

応募書類にあるように「教育研究業績書」「主要な著書または論文」の提出が求められます。

同じ理学療法士養成校の教員といっても、専門学校と大学では求められるポイントが違うということを理解しておいてください。

理学療法士の教員における年収・給与

理学療法士の養成校教員は、病院や施設などで働く理学療法士よりも収入が高い傾向にあります。ただ教員の給料は年俸制であるところが多く、契約更新をされない可能性がある職場も多いです。

また養成校の数が増えていることと少子化が進んでいることもあり、以前と比較して年収は低下傾向にあります。

教員の給料に関しては、年収額だけでなくこうした点についても考えることが大切になります。そこで以下に、理学療法士養成校教員の給料の実際について記します。

専門学校教員の給料は平均給与より高い

理学療法士養成校の教員における年収は、理学療法士求人の平均年収である350万円前後を大きく超えているところが多いです。

もちろん、理学療法士としての経験年数や実績、学位の有無によってもらえる年収は異なります。ただ平均と比較すると給料は良い傾向にあります。例えば以下は、千葉県にある専門学校の理学療法士求人です。

給与の欄にモデル年収500万円~600万円とあります。病院勤めで年収500万円を超える求人はほとんどないため、非常に好条件の求人だといえます。他の求人も年収400万を超えているものが多く、理学療法士の年収としては良い方です。

ただ、いくら理学療法士養成校の教員は給料が高い傾向にあるといっても、以前と比べると全国的に下がってきています。これは、養成校の乱立や少子化が大きく影響しています。

例えば以下は、群馬県にある専門学校の理学療法士求人です。

年収が300万円~650万円とあります。これは年収300万円の求人と考えるのが妥当であるため、理学療法士求人の中でも低い方だといえます。休日数が123日と多いことも関係していますが、専門学校教員の給料自体が下がっていることは間違いありません。

このように、養成校教員の年収が高い傾向にあるといっても年収は下がりつつあり、実際に安い求人があるのも事実です。

大学教員の給料は専門学校教員より高い

大学教員の給料は、大学の種類(国公立大学、私立大学)や立場(教授、准教授、講師、助教授)などで異なります。大学の種類別では国公立より私立大学が高い傾向にありますが、大学によって違うため一概にはいえません。

ちなみに、以下はある国立大学の立場別の平均年収になります。

理学療法士で大学教員といえば、助教授として働く人が多いです。助教授の平均年収額は677万円になります。これは、病院や専門学校の教員よりも圧倒的に高いといえます。また教授になると年収が1,000万円を超えます。

このように大学教員の給料は就職する大学や立場によって異なりますが、基本的に専門学校の教員よりは高いと考えてください。

理学療法士養成校教員は年俸制が多い

また大学でも専門学校でも、養成校の多くは給料の額を年単位で決める年俸制という形をとっています。年俸制では、年俸額を12分割して毎月支給されることになります。例えば以下は、岡山県にある専門学校の理学療法士求人です。

求人にあるように、年俸額が276万円であれば毎月の月給は23万円となります。

また年俸制には、年単位で賃金を決定するということ以上に特徴的なことがあります。年俸額が前年度の業績評価に基づいて、上司による話し合いや交渉によって決まるということです。

年俸制の特徴が最も現れているのが、プロ野球選手です。よくオフシーズンに新聞などで交渉決裂や保留などの文字を見ますが、これは年俸額の交渉結果を示したものです。

養成校の中にも、契約更新制度を取り入れて、年度ごとに給与内容の見直しを行っているところもあります。そのような場合、業務対応能力によっては契約を更新しない(退職勧告)というシビアな現実を突きつけられることもあるのです。

このように年俸制はいわゆる成果主義の典型です。成果を出せば年俸額は上がりますし、逆に結果を残せなかった場合は下がります。そのような意味では、理学療法士養成校の教員は臨床家よりシビアな仕事だといえます。

理学療法士養成校の教員は大変か?

養成校の教員になりたいと思っていても「養成校の教員は大変」と聞いて転職を考え直している人も多いです。ただ、本当に養成校教員は大変なのでしょうか?

以下に、理学療法士養成校教員の忙しさの現状について解説します。

年間休日数は多い

まず教員になると年間休日数は多いです。基本的に学校が土日祝日休みであるため、教員もそれに合わせた休日数になります。土日祝日休みであると、年間休日数は120日以上です。

例えば以下は、群馬県にある専門学校の理学療法士求人になります。

求人にあるように土日祝日が休みであり、年間休日数は123日です。中にはオープンスクールなどのイベントで出勤日が増える学校もありますが、それでも年間休日は110日前後あります。

こうした年間休日数だけで考えると、理学療法士の養成校教員は大変ではないといえます。

大学教員は研究で忙しい

大学教員の業務は、学生への教授(授業)だけでなく、学生の研究指導、自分自身の研究があります。この研究が、大学教員の仕事を大変にしているのです。

研究に充てられるのは業務時間の30%になります。当然、それだけで研究が終わることはないため、仕事後に実施することになるのです。また平日の夜だけでなく、休日も研究に費やす日も多いのが現状です。特に、学会前は発表の準備などで忙しさは倍増します。

授業に関しても準備がありますし、日々の学生指導も楽ではありません。そうした中で研究を同時並行していくのは非常に大変です。

このように、大学教員は想像以上に研究に追われて忙しいのが現状です。

精神的ストレスが強い

また理学療法士養成校の教員ゆえに、学生が抱える問題について一緒に考える機会が増えます。その中には、予兆なく突発的な問題に対応しなければいけないこともあり、多大な精神的ストレスを受けやすくなることが多いです。

専門学校と大学では指導形態の違いから、問題の内容には違いがあります。しかし、受け持ちクラスの全生徒が抱える悩みについて考えなければいけないということは、理学療法士養成校の教員として共通していることです。

理学療法士養成校に限ったことではありませんが、学生は十分な社会的解決能力を備えていないことがほとんどです

そのため、人間関係における悩みや親子関係のもつれ、金銭トラブルなどのさまざまな問題を起こしやすいです。教員になると、そのようなことの解決に四六時中終われるといっても過言ではありません。

個人的な面談機会を持つことで解決するケースもありますが、中には病院や警察への対応、社会的な謝罪対応が必要になる場合もあります。

特に実習中は、さまざまな個人的問題が出やすくなります。その際には実習先を訪ねて、学生への修正指導や施設側への謝罪対応などを行うこともあります。そのため、教員にはプライベートな時間も含めて学生最優先で物事の判断と対応を行う行動力が求められます。

このようなことからも、理学療法士養成校の教員は身体的な疲労以上に精神的な負担を感じやすいといえます

理学療法士の教員へ転職するためには

理学療法士(PT)の養成校教員へ転職するときには、まずは大学教員か専門学校教員かによって必要な条件や求人の探し方が違います。

専門学校の教員は5年の臨床経験があれば転職できますが、大学教員は大学卒業による学位取得が必須です。また専門学校は求人サイトなどで公募がありますが、大学教員は大学の公式HPでの公募が基本になります。

さらに専門学校教員を探すときには、自分で検索する求人サイトではなく転職サイトへの登録が必須です。教員の求人を多く扱っている転職サイトに登録すれば、求人は圧倒的に見つかりやすくなります。

給料に関しても、一般的な病院よりも高い傾向にありますが、年々下がりつつあることは知っておくことが大切です。

理学療法士の教員への転職は、以上の点を踏まえた上で検討するようにしましょう。そうすることで、あなたの希望に合った求人への転職を成功させることができるようになります。


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