理学療法士の派遣は禁止?派遣の時給や転職する際の注意点ついて解説

理学療法士(PT)の中には、派遣として働いている人もいます。基本的に理学療法士の派遣は禁止されていますが、条件を満たせば派遣労働も可能なのです。

派遣であれば、一般的な理学療法士のパート・バイトよりも時給が高い傾向にあります。派遣は期間限定であるため、時給が高く設定されているのです。

そのため時給だけで考えると、パート・バイトよりも派遣で働いた方が良いように感じます。しかし実際には、時給だけで派遣を選ぶと失敗することになります。派遣は求人数が少ないため、働く場所や条件などの選択肢が限られます。つまり、あなたの理想に合った求人が見つかりにくいのです。

またしっかり働いて高収入を得たいのであれば、派遣よりも正社員の方が稼げます。期間限定ではなく長期的に働けるため、次の転職の心配もない上に収入も良いのです。

派遣の理学療法士として転職を考えているなら、こうした派遣の現状について理解しておくことが重要になります。そこで今回は「派遣の時給や理学療法士(PT)が転職する際の注意点」について解説します。

もくじ

理学療法士における非常勤(パート・アルバイト)と派遣の違い

理学療法士の業界において派遣は一般的ではないため、派遣と非常勤の違いをイメージできていない人も多いです。ただ派遣として働くことを考えているなら、派遣と非常勤の違いを理解しておかなければいけません。派遣と非常勤では、雇用主が違うためです。

非常勤であるパートやバイトの雇用主は、勤務する病院や診療所、介護保険施設になります。このような雇用形態は「直接雇用」と呼ばれています。

そのため、非常勤は雇用主である病院などの雇用主から「給料の支払い」「保険の手続き」「有給休暇の付与」「休業手当の支払い」などが行われます。当然、労働契約も勤務先の病院などの雇用主と結びます。

一方で派遣の場合は、雇用主が人材派遣会社になります。そのため、労働契約を結ぶのは勤務先ではなく人材派遣会社になります。その結果、給料の支払いや保険の手続きなども全て人材派遣会社が行います。

理学療法士は病院ではなく人材派遣会社へ登録申し込みをして、採用されれば派遣社員として労働契約を結びます。

派遣会社は、雇用した理学療法士を病院へ紹介することになります。病院は派遣会社から理学療法士を紹介してもらい、派遣会社に紹介料を支払うことで理学療法士に労働を指示できるのです。

つまり、派遣になると勤務先と理学療法士の間に派遣会社が入る形になります。このように非常勤と派遣は、雇用主に違いがあるということを理解しておきましょう。

理学療法士の派遣は禁止?

理学療法士には、派遣で働くことを考えたことがない人がほとんどだと思います。理学療法士(リハビリ職)は基本的に派遣労働が禁止されているためです

日本では、法律によって労働者派遣事業が禁止されている業務が決まっています。具体的には、以下の業務は派遣という雇用形態を取ることができません。

  • 港湾運動業務
  • 建設業務
  • 警備業務
  • 医療関係業務
  • 弁護士、司法書士、土地家屋調査士
  • 公認会計士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士
  • 管理建築士

このように理学療法士(リハビリ職)をはじめとした医療関係業務は、労働者派遣業務が禁止されています。そのため基本的に派遣で働いている人はいません。ただ派遣で働く人もゼロではなく、条件によっては理学療法士でも派遣が認められているケースもあります。

例えば以下の条件に当てはまる場合には、理学療法士でも派遣が認められています。

  • 紹介予定派遣をする場合(最長6ヶ月の派遣期間後、正社員として雇用されることを前提とした派遣)
  • 産前産後休業、育児休業、介護休業を取得した人の場合(配属先のスタッフが産前産後休業、育児休業、介護休業で人員不足である期間のみ)
  • 医師の業務で「へき地」もしくは「厚生労働省令で定める場所」である場合

例えば、以下は以下は愛知県にある通所リハビリの派遣求人です。

求人票にあるように「紹介予定派遣」の派遣求人になります。紹介予定派遣なので理学療法士の派遣も問題ありません。また以下は東京にある介護老人保健施設の派遣求人です。

仕事内容に「産休・育休者さんの代替勤務となります」とあります。条件にある「配属先のスタッフが産前産後休暇で人員不足の期間」に当てはまる派遣求人です。この場合、求人に派遣の契約期間が明記していないため、必ず事前に確認することが重要になります。

以上のように、基本的にリハビリ職である理学療法士の労働者派遣業務は禁止されています。そのため、理学療法士の派遣は数が少なく認知されていないのです。ただ条件を満たした派遣求人も存在することは知っておきましょう。

理学療法士派遣求人の時給

なお理学療法士の派遣求人における時給はどれくらいでしょうか? 理学療法士の非常勤における時給の平均は1,500~2,000円であり、派遣の求人はパートやアルバイトよりも少し高くなります。雇用期間が限定されているためです。

当然ですが、期間限定の職場で働きたいと考える人は少ないです。転職を繰り返すのは非常に手間がかかり面倒だからです。そのため、雇用側も高い時給を提示して求人を募集しています。

例えば以下は、デイサービスにおける理学療法士の派遣求人です。

求人票にあるように派遣の時給は2,000円~となっており、交通費も全額支給なので2,000円 + αになります。理学療法士の派遣で2,000円を下回る給料は安いと考えてください。一般的なパート求人の時給が1,500~2,000円であるため、派遣の時給は高いといえるでしょう。

派遣の理学療法士求人は期間限定ではあるものの、時給だけで考えると高時給であると考えてください。

派遣と正社員はどちらが稼げるか?

派遣で働けばパート・バイトよりも高い時給を得ることができます。ただ、期間限定である上に時給も数百円の違いです。それでは、年収で考えると派遣と正社員はどちらの働き方が稼げるのでしょうか?以下に、理学療法士における派遣と正社員の年収を算出して比較します。

以下は、先ほど挙げた理学療法士の時給2,000円の派遣求人です。

この派遣求人先において1日8時間、月に20日で1年間働いたとして年収を計算します。交通費は理学療法士の平均的な交通費額である月額2万円と設定します。

(時給2,000円 × 8時間 × 20日 + 交通費2万円) × 12ヶ月 = 408万円

理学療法士で年収400万円を超える求人は少ないため、派遣の時給で1年間働くと非常に高い収入が得られるといえます。

ただ理学療法士の正社員求人でも探し方次第では年収500万円を超える求人も見つかります。例えば以下は、東京にある訪問リハビリの理学療法士求人です。

求人票にあるように、年収は520万円~になっています。詳細な計算は省略しますが、年収500万円は時給換算で約2,600円です。

しかも派遣の場合は、派遣期間で労働契約が切れて無職になる可能性がありますし昇給もありません。また派遣は1年間続けて働ける可能性は低いですし、1日8時間で月に20日勤務できるかも派遣先次第になります。

つまり、派遣による労働は収入の見通しがつきにくいのです。

そのため、もしあなたがしっかり働いて収入を上げて安定した給料を得たいと考えているなら、派遣でなく高収入の理学療法士求人を見つけて転職した方が良いといえます。

理学療法士の派遣求人は求人数が少なく選択肢が限られる

さらに理学療法士の派遣求人は、正社員やパートと比較すると求人数が少ないため選択肢が非常に狭くなります。先に述べたように理学療法士の派遣は基本的に禁止されており、一般的に利用されていないためです。

そのため、理学療法士を雇用している人材派遣会社も少なく、病院や施設側も理学療法士も派遣という選択肢を認知していないため、求人数が少ないのが現状になります。

例えば以下は、理学療法士の求人サイトで「理学療法士 派遣」というキーワードで検索した結果です。

検索結果にあるように、派遣の理学療法士求人はありません。理学療法士は派遣という働き方が一般的でないため、求人サイトに掲載されていないのです。ただ理学療法士の派遣求人が全くないかというと、そうではありません。

例えば以下は、理学療法士の派遣求人を扱う求人サイトの検索結果になります。

求人数は限られていますが、派遣の求人が37件あります。ただ、理学療法士の派遣求人を多く扱っているこの求人サイトでも、派遣の求人数はパート・バイト求人の約60%程度しかありません。

このように理学療法士の派遣は求人数が少ないため、働く場所(病院やクリニック、老健など)や条件(給料や勤務時間、勤務日数)が限られています。つまり、選択肢が非常に狭くなるのです。

理学療法士が派遣として働く場合には、こうしたデメリットも把握した上で検討することが重要になります。

理学療法士が派遣で働くメリットはあるのか?

理学療法士(PT)が派遣として働く場合、以下に挙げる6つのことを考慮した上で検討することが大切です。

  • 理学療法士の派遣は条件があり一般的ではない
  • 基本的には期間限定の契約となり、派遣終了後は無職になる可能性がある
  • 紹介予定派遣の場合は派遣期間後に正社員契約の可能性もある
  • 派遣の時給はバイトよりも高い
  • 年収で考えると正社員ほど稼げない
  • 求人数が少なく職場や条件を選べない

以上の6点を考えると「期間限定で働いて稼ぎたい」というのであれば、派遣の理学療法士として働く方法もありです。

ただ理学療法士の派遣求人は認知度が低く働く条件もあるため、求人数も少なく選択肢は非常に限られています。そのため、あなたが希望している期間や場所、時給に一致した求人を見つけるのは難しいと考えてください。

さらに、しっかり働いて高い収入を得たいのであれば正社員の方が稼げます。高収入を得ることが目的であれば、派遣として働くよりも高額求人を探して転職した方が圧倒的に現実的です。

もし派遣の理学療法士として働くことを考えているのであれば、以上のことを考慮した上で検討するようにしましょう。バイトよりも時給が高いからという理由で派遣求人に絞って転職活動をしていると、失敗する可能性が高いので注意してください。


リハビリ転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!


リハビリ関係者が転職を考えるとき、転職サイトを活用するとより自分の希望に沿う求人を見つけることができるようになります。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉まで行うのは現実的ではありません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や施設を含め、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって特徴が大きく異なります。例えば、電話だけの対応で素早さを重視する会社があれば、面接まで同行することで難しい案件への対応を得意としている会社もあります。他には、大手企業に強みを発揮する会社があれば、地方求人を多く保有している会社もあります。

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