言語聴覚士が介護保健施設(老健等)へ転職するメリット・デメリット

先日、病院に勤務している言語聴覚士(ST)さんから
デイサービスや老人保健施設(老健)、老人福祉施設といったような
介護保険施設での働き方について知りたい、といった要望が届きました。

介護保険施設では、病院やクリニックといったような医療機関とは違った役割が言語聴覚士には求められます。
介護保険分野であるからこそ学べることや、得られるメリットというものもあります。

今回は、「言語聴覚士が介護保険施設で働くメリット・デメリット」について共有させてください。

もくじ

STが介護保険施設へ転職することで得られるメリット

言語聴覚士が介護保険施設へ転職すると、病院などの医療機関とは違った視点で仕事をする必要があります。
そうした中で、「社会復帰という考え方」や「コミュニケーション」について深く学べることは、特に言語聴覚士として大きなメリットだといえます。
そこで以下に、介護保険施設へ転職することで得られる利点について記します。

社会復帰という考え方が身に付く

言語聴覚士が活躍する場には、病院やクリニックといった医療機関や老人保健施設といったような介護保険施設などがあります。
そして同じ言語聴覚士という職種であっても、それぞれの職場で求められる役割は異なります。

例えば、医療機関であれば、病気や事故などによって一時的に体の機能が低下している人を対象とすることが多いです。
つまり、治療後の回復の度合いが、大きい人を対象にする場合が多いのです。
同時に、リハビリの目標も、病前の生活に近い状態を目指す場合も多々あります。
そういった意味で、STには「治療者」としての役割が強く求められると言えます。

その一方で、介護保険施設では、医療保険での治療が終了となった脳卒中後の方や先天的疾患の利用者さんといったように
後遺症がある程度以上残存している人たちを対象にリハビリを行います

つまり、介護保険施設では、医療機関の場合とは異なる問題解決や治療方針が必要になってくるわけです。
そこで言語聴覚士は、「そのような障害を抱えた上で、どのようにして社会生活に復帰するか」ということを考えなければなりません。

こうしたことから、介護保険施設に勤める言語聴覚士には、より生活に沿った視点でのリハビリテーションが強く求められます。
そのため、地域に仕組みや在宅に関することなど、生活復帰・社会復帰という考え方が自然と身に付くことになります。
このことは、言語聴覚士が介護保険施設で働くことで得られるメリットの一つだといえます。

コミュニケーション能力が身に付く

また、言語聴覚士が介護保険施設で働いていると、利用者さんの家族と接する機会が多くあります。
ご家族などの介護力にもよりますが、介護保険施設を利用している人の多くが、在宅復帰に向けてリハビリを行います。
そして既に述べたように、「いかに利用者さんが障害を抱えた状態で社会復帰できるようにするか」ということが重要になります。

例えば、脳梗塞によって嚥下障害が残ったまま家に帰る場合
当事者が経口摂取できるものや、食べるときの注意点などを、家族の介護者が理解しておく必要があります。
また、言語障害が残ってしまったような場合には、コミュニケーションが上手く取れないことも多々あります。
そのため、利用者の家族が、接し方がよくわからずに悩んでしまうというケースも多くあります。

このような場合には、利用者の家族に対するアドバイスや相談業務を行うことも、介護保険施設で働く言語聴覚士としての大切な役割になります。
このような助言や相談といったことが頻繁に行われる職場なので、人にわかりやすく説明する力や相手のニーズを短時間で聴取してしまうというコミュニケーションスキルも身に付くでしょう。
このような点も、言語聴覚士が介護保険施設で働くことで得られるメリットの一つです。

 

STが介護保険施設へ転職することで起こりえるデメリット

言語聴覚士が介護保険施設で働くと、家庭復帰・社会復帰とった視点を学べたり、コミュニケーションスキルが向上したりするというメリットがあります。
その一方で、介護保険施設だからこそ起こりえる苦労もあります。
そうしたことは、デメリットというわけではありませんが、転職する際には事前に理解しておく必要があります。
そこで以下に、言語聴覚士が介護保険施設へ転職することで起こりえるデメリットについて記します。

介護職としての役割も求められる

病院やクリニックといった医療機関で言語聴覚士として働く場合、基本的にはリハビリにおける専門職としての役割のみを求められます。
具体的には、患者さんの身体機能を改善したり、補助具などを利用して在宅復帰に向けた支援を行ったりすることが、言語聴覚士の主な仕事になります。
医療機関では、このような治療家とリハビリテーションを支援する専門家としての役割だけに集中して仕事を行うことができます。
その一方で、介護保険施設で働く場合、言語聴覚士に求められる役割はそれだけではありません。
特に介護保険施設では、「人手不足」という問題に悩まされているところが少なくありません。
そのため、リハビリの専門職である言語聴覚士であっても介護職としての仕事を任される場面も多々あります。
例えば、利用者さんの送迎や入浴介助、食事介助といったようなことを任せられることもあります。
そのため、言語聴覚士であっても、介護保険施設で働く場合には、こうした介護に関することも勉強しておく必要があります。
また、そのような現状があるため、個別のリハビリを集中して行えないことも多くあります
病院やクリニックなどの医療機関では、20分や40分などの決まった時間はマンツーマンで患者さんのリハビリを行うことができます。
しかし介護保険施設では、言語聴覚士も介護に関する仕事も行わなければいけないようになるため、マンツーマンで行うリハビリ時間が取れないこともあります。
それだけではなく、介護保険施設の利用者さんは基本的には高齢であるため、常に転倒の危険性があります。
そのため、特に介護保険施設ではリハビリ中でも周囲の状況に目を配っておかなければいけません。
このように、言語聴覚士が介護保険施設で働く場合、仕事内容が多岐にわたるため、専門職としての業務が疎かになってしまう可能性が高くなります。
こうしたことから、「患者さんとのリハビリは集中して行いたい」と考えている言語聴覚士は、このような現状があることを理解した上で転職先として介護保険施設を選択することが大切です。

治療家としての役割は求められない

介護保険施設を利用する人には、病気が発症して長い期間が経っている人が多いです。そのため、いくら言語聴覚士がリハビリを行っても、明らかな機能改善が望めないことがほとんどです。
病院などの医療機関では、「患者さんが抱えている障害をいかに残さないように治療するか」というような、治療家としての役割が言語聴覚士には求められます。
一方で介護保険施設では、そのような治療家としての側面より、リハビリテーションを支援する専門家としての役割が言語聴覚士には主に求められます。
つまり、「障害を抱えた状態でどのようにして社会に適応していくか」ということを考えなければいけません。
そのため、やりがいがあることに違いはありません。
また既に述べたように、そうした社会復帰に関して広い視野を持てるようになることは、言語聴覚士としてメリットだといえます。
ただ、言語聴覚士として治療家の役割を担いたいと考えている人にとっては、介護保険施設での仕事は物足りなく感じるかもしれません。
さらに、そのような現状を利用者さんも理解しているため、あまりリハビリに積極的ではなかったり、慰安のためのマッサージを求められたりすることも少なくありません。
例えば、あなたが利用者さんの嚥下機能を向上させようと考えて「嚥下訓練を行いましょう」と言っても、「きついからしたくない」「そんな訓練より肩が凝っているからマッサージして欲しい」というような答えが返ってくる可能性もあります。
介護保険施設では、このように身体機能の改善に限界がある人が多いため、治療家としての役割が言語聴覚士に求められることが少なくなります。
このような現状を理解しておかないと、転職後に「思ったような治療ができない」と後悔することになります。
今回述べたように、言語聴覚士が介護保険施設へ転職すると、「社会復帰に関する視野が広がる」「コミュニケーション能力を身に付けることができる」というメリットがあります。
その一方で、「介護職の役割が求められる」「治療家としての役割が求められにくい」というデメリットもあります。
介護保険施設への転職を考えている場合には、こうしたメリット・デメリットの両面を理解した上で、転職先の一つとして検討することが大切です。

リハ特化型デイでの働き方についても詳しくまとめています^_^
👉 言語聴覚士が短時間デイで働くメリットデメリット

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