作業療法士(OT)が総合病院へ転職するメリット・デメリット

作業療法士(OT)の中には、総合病院に勤務している人はたくさんいます。その一方で、整形外科クリニックやデイサービスなどの経験しかなく、総合病院で働いたことがない人もいます。
そして、総合病院での経験がない作業療法士の中には、「一度は総合病院で働いてみたい」と考えている人も多くいます。そのため、転職時に総合病院における作業療法士の募集を探している人は少なくありません。
確かに、総合病院へ転職することで得られるメリットはたくさんあります。その一方で、総合病院に転職する際には、整形外科クリニックやデイサービスなど他の職場とは違ったことに注意する必要があります。
総合病院への転職を考えている場合には、こうしたメリット・デメリットという両面を知った上で転職先として選択することが大切です。そうすることで、転職に失敗することが少なくなります。
そこで今回は、「作業療法士が総合病院へ転職するメリット・デメリット」について述べます。

もくじ

作業療法士が総合病院へ転職することで得られるメリット

作業療法士が総合病院へ転職すると、さまざまなメリットを得ることができます。特に、幅広い疾患の患者さんや多職種の人と関われることは、総合病院ならでは特徴です。
そこで以下に、総合病院へ転職するメリットについて記します。

作業療法士として幅広い知識を学ぶことができる

専門職では、自分の得意な専門分野に特化して仕事をしている人が少なくありません。特に医者などでは、整形外科医や心臓外科医、内科医といったように、1つの分野を専門としている人がほとんどです。
これは作業療法士でも同じであり、作業療法士の中にも、整形外科専門や脳卒中専門で作業療法を行っている人もいます。
確かに、このようにある1つの分野に特化していることはあなたの「ウリ」になります。転職する際も、あなた自身が得意とする分野を持っていると、履歴書や面接においてアピールをしやすくなります。
しかし、リハビリを効果的に進めるためには、いくら整形外科疾患に特化して整形外科疾患の患者さんばかりを担当していても、その他の分野に関する知識も必要になります。
例えば、整形外科で作業療法士として勤めているとします。そこでは、整形外科的な疾患で作業療法の処方が出される人がほとんどです。しかし、そのような人達のほとんどは、高血圧や糖尿病などの内科疾患を持っています。
そして、そのような内科疾患やそれに対する薬剤などは、整形外科疾患の治療に大きな影響を与えます。そのため、いくら整形外科病院で整形外科疾患の患者さんを担当しているとしても、既往疾患や服用している薬など、さまざまなことを考慮しながら作業療法を行っていかなければいけません。
つまり、効果的な作業療法を行うためには、どのような職場で働いていても医学に関する総合的な知識が必要になります。
総合病院は、このような総合的な知識が学びやすい環境であるといえます。総合病院には、基本的に複数の診療科が病院内にあります。そのため、作業療法士も必然的にさまざまな疾患の患者さんと接する機会が多くなります。
もちろん作業療法士が関わらないような診療科もあります。しかし、それでも整形外科クリニックなどと比べると、幅広い疾患の患者さんを担当することになります。その結果、医学に関する知識を総合的に学ぶことになります。
このように、病院内にさまざまな診療科が存在することは、作業療法士が総合病院に転職するメリットの1つだといえます。

作業療法士として多くの職種と仕事ができる

総合病院には、病院内にさまざまな診療科があります。そのため、それだけたくさんの職種の人と協力する機会が増えます。また、介護保険といったような医療分野以外における業種の人と関わることも多くなります。
例えば、整形外科クリニックに勤めていると、ソーシャルワーカー(社会福祉士)といった職種と関わることはほとんどありません。社会福祉士とは、保険や医療だけでなく、児童福祉、高齢者福祉、行政など社会福祉業務全般に関わる仕事を行う人です。
具体的には、病気によって働くことができなくなった人などに対して、「どのようにして生活をしていくのか」「どのような福祉サービスを利用できるのか」といった相談援助を行います。
整形外科クリニックに来院される患者さんのほとんどは、自宅での生活が自立しています。そのため、そのような社会福祉士のサポートを受けている人はかなり少ないです。
一方で総合病院に入院している患者さんには、在宅での生活が困難である人が多くいます。そして、作業療法士や理学療法士によるリハビリを受けても障害が残ってしまい、現状では在宅に復帰することが難しいということもあります。
そのようなときに、在宅へ復帰したり、退院先として施設を検討したりするために社会福祉士を頼ることも少なくありません。実際に総合病院では病院内に社会福祉士が勤務しているところがほとんどです。
そして、社会福祉士に相談することで、作業療法士では思いつかなかったアイデア等をもらえることが多くあります。その結果、障害が残ったままでも退院後も安心した生活を送ることができるようになります。
以上のことは1例ですが、このように多くの職種と仕事ができるということも、作業療法士が総合病院へ転職するメリットの1つだといえます。

作業療法士が総合病院へ転職することで起こりえるデメリット

作業療法士が総合病院で働くと、「幅広い知識を学ぶことができる」「多職種の人と関わることができる」というメリットがあります。ただ、逆にそうしたことが原因で苦労する人もいます。
これは、総合病院へ転職するデメリットではありませんが、総合病院への転職を検討している場合には、事前に知っておく必要があることです。
そこで以下に、作業療法士が総合病院へ転職した後に苦労しやすいことについて記します。

作業療法士として幅広い知識が必要

既に述べたように、作業療法士が総合病院に転職すると、さまざまな疾患を持った患者さんを担当することになります。
例えば、整形外科クリニックで働いている作業療法士であれば「変形性膝関節症」や「肩関節周囲炎」「腰部脊柱管狭窄症」といったような、整形外科的疾患の患者さんを担当することがほとんどです。
一方で総合病院では、病院内にさまざまな診療科があるため、作業療法士が担当する患者さんも、いろいろな疾患をもっています
病院によっても異なりますが、ある患者さんは「整形外科疾患によって起こっている障害に対する作業療法」、他の患者さんは「脳梗塞後の麻痺に対するリハビリ」といったように、全く異なる疾患の患者さんを同時に担当することになります。
そのため、それぞれの患者さんが持つ疾患に関する幅広い知識が求められるようになります。
また総合病院には、「急性期担当」や「回復期担当」といったように時期ごとに担当者が変わるような病院もありますし、全時期を一人の作業療法士で担当するところもあります。後者のように、一人の患者さんにおける全ての期間を担当する場合、作業療法士に求められる役割が非常に多くなります。
例えば、急性期では高いリスク管理能力などが求められます。そして回復期になってくると、積極的な作業療法を行う必要があります。これが維持期になってくると、特に患者さんの生活面を意識しなければならなくなるため、介護保険などの社会資源を上手く利用することも大切になります。
このように、時期によって作業療法士として必要な知識は異なります。急性期や回復期などのように、時期ごとに担当が変わるのであれば、全てを把握していなくても問題ありません。しかし、全時期を一人の作業療法士が担当する場合は、全ての期間に関係することを幅広く網羅しておかなければなりません
以上のように総合病院では、幅広い知識を求められるようになります。そのため、必然的に学ばなければいけないことが多くなることを理解しておいてください。

他職種との連携が必要

作業療法士が総合病院で働く場合、多くの職種と連携を取る場面が増えます。それは総合病院では、患者さんの退院を目標にさまざま職種がチームとなって治療を行うためです。
既に述べたように、チーム医療を学ぶことは大切なことですし、貴重な経験です。しかし、年齢も業務内容も異なる他職種の人や、患者さんの家族とコミュニケーションを取るということは、想像以上に配慮が必要なことです。
例えば、入院中には作業療法をスムーズに進めていくためにも、看護師(ナース)や介護士に協力してもらうことが必要になります。
入院中に作業療法士が患者さんと関われることができる時間は、長くても1日1時間程度です。それ以外の時間は、病棟で過ごされることがほとんどです。そのため、患者さんのリハビリをスムーズに進めていくためには、病棟内での過ごし方が大切になります。
その際に、看護師や介護士に病棟内での定期的な歩行練習や移乗練習を協力して行ってもらうことがあります。
このようなときに、看護師に「定期的に歩行練習を行ってください」と言っても上手くいきません。ただでさえ忙しい看護師は、そのようにお願いしても実施してくれないことがほとんどです。看護師としての仕事だけでも手一杯であるため、余計な業務を頼まれても、何か特別な理由がないと行ってくれないことが多いです。
そのため、看護師などの他職種に協力をお願いするときは、もう少し具体的な伝え方をするようにしましょう。
例えば「〇〇さんは、回復時期にあるので、積極的に歩く練習をする必要があります。そのため、時間に余裕があるときでよいので声をかけて歩行練習を行ってもらってもよろしいですか?」というように、状態を詳しく説明した上で丁寧にお願いすると、協力してくれる可能性が高くなります。
これは一例ですが、作業療法士として総合病院転職する際は、さまざまな職種とコミュニケーションを取ることが大切になるということを知っておいてください。
今回述べたように、総合病院に作業療法士が転職する場合、「幅広い知識」と「他職種との連携」が、特に求められます。このことは、総合病院だからこそ学べることでもありますが、逆に苦労する点でもあります。
こうした総合病院へ転職するメリット・デメリットの両面を知っておくと、転職で失敗することが少なくなります。


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