言語聴覚士(ST)の資格を活かせる転職先と職域

理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などのリハビリ職者の中でも、言語聴覚士は最も資格所有者数が少ない職種です。そのため、理学療法士や作業療法士の中には、言語聴覚士と一緒に働いたことがないという人も多くいます。
そして実際に、言語聴覚士を雇い、リハビリに言語聴覚訓練を取り入れている病院は多くありません。求人数も理学療法士や作業療法士などと比べると、言語聴覚士は明らかに少ないです。
このように言うと、中には「言語聴覚士って将来大丈夫なの?」と感じる人もいると思います。
結論から述べると、言語聴覚士の将来性は理学療法士や作業療法士と比べても何も問題ありません。むしろ言語聴覚士の方が、今後は職域が広がる可能性は高いです。
そこで今回は、「言語聴覚士(ST)の資格を生かした転職先と職域」について述べます。

もくじ

言語聴覚士の資格を活かした転職先

言語聴覚士が活躍する職場には、さまざまなものがあります。例えば、病院やデイサービス、デイケア、介護老人保健施設(老健)といった介護保険施設などは、多くの人が言語聴覚士が働く場として認識しています。
ただ、他にも言語聴覚士の資格を活かせる職場はたくさんあります。そこで以下に、言語聴覚士の資格を活かした転職先について記します。

病院やクリニックなどの医療機関

言語聴覚士の多くが勤務しているのが、病院やクリニックといった医療機関になります。このような医療機関では、脳梗塞などの病気や交通事故といったものによって言語能力や摂食・嚥下能力、コミュニケーション能力が障害された患者さんを対象にリハビリを行います。
このような医療機関における言語聴覚士の役割としては、「障害といかに向き合っていくか」というリハビリテーション的な観点よりも、「機能をいかに回復させるか」という治療的な側面が強く求められます
そのため、言語聴覚士として体の機能面に強くなりたいと考えている人は、医療機関への転職はおススメです。

保健センター、保健所

言語聴覚士の中には、保健センターや保健所で勤務している人もいます。保健センターは市町村を中心とした地域密着型の行政サービスを行っているところになります。一方で保健所は、保健センターと比べると、より広い範囲でなおかつ専門性の高いサービスを提供している施設です。
どちらも行政サービスであることに変わりはありませんが、それぞれで求められる役割は異なります。
保健センターでは、言語聴覚士が医療機関で行うようなリハビリは行わず相談業務が主になります。たとえば、子供の言語発達に関することや、コミュニケーションの問題などの相談を行います。
保健所でも、基本的に言語や嚥下訓練などは行わず、相談業務と発達評価が主な業務となります。ただ保健所は、保健センターで受けるような身近な相談に加えて、病気や事故による後遺症、高齢者の聴覚や言語能力の低下に関する悩みなどにも対応します。
そのため、保健所での言語聴覚士の仕事は、より広く専門的な知識が求められることになります。
保健所と保健センターでは、以上のような違いがあります。しかしどちらも相談業務が主になりますので、このように地域に関わっていきたいと考えている方にはおススメの転職先だといえます。

ことばの教室

ことばの教室とは、主に言語能力やコミュニケーション能力に障害を持った子供に対して、そのような能力の発達を支援するための施設をさします。具体的に対象となるのは、以下のような症状になります。
・吃音
・難聴
・自閉症
・構音障害
またことばの教室では、「養護学校や聾学校ではなく一般の学校に行っている子供」が対象になります。そのため、保護者だけでなく通っている学校で担任されている先生方とのコミュニケーションも大事になります。
ただ、ことばの教室はそれほど多く存在しないため求人数は限られています。そのため、インターネットや一般の雑誌などでは、求人情報を見つけることはかなり難しいです。
そこで、もしことばの教室で働きたいと考えている人は、非公開求人を多く持っている転職サイトに頼ると、求人情報が見つかりやすくなります。上手く転職サイトを利用することで、求人情報を紹介してもらうようにしましょう。

養護学校、聾学校

養護学校は特別支援学校と呼ばれる施設であり、障害児を対象とした教育機関です。そのため、特別支援学校で正社員として働く場合は、言語聴覚士の資格だけではなく「特別支援学校教員」の資格が必要になります。
特別支援学校は、以下のような障害を持った人を対象とした学校になります。
・知的障害
・身体障害
・聴覚障害
・視覚障害
・病弱
この中で、聴覚障害を持った人を主に対象とする学校が聾学校です。つまり、特別支援学校の中に聾学校が含まれています。
特別支援学校の対象者は、小学生~高校生までです。このような特別支援学校では、多くの言語聴覚士が活躍しており、求人情報も比較的多くあります。ただ、先ほど述べたように、教員として働く場合は、特別支援学校教員の資格が必要になるということを知っておいてください。

教育センター

教育センターは、教職員に対して研修などを行ったり、子供たちの抱える問題に対応したりというような教育に関することを幅広く支援している施設になります。言語聴覚士は、言語やコミュニケーション能力に障害を抱えた子供に対して訓練と教育を行っていきます。
言語聴覚士が教育センターで働くためには、養護学校のように教員の資格は必要ではありませんが、教育者としての役割も求められます
また教育センターといっても、職場によって言語聴覚士に求められる能力が異なります。そのため、教育センターに転職する際は、業務内容を確認した上で、あなたに適性があるかどうかまで検討することが大切です。

障害者福祉施設、障害児療養施設

障害者福祉施設や障害児療養施設といった社会福祉施設は、言語聴覚士の需要が非常に高い職場です。この2つの施設においては、言語やコミュニケーション能力に障害を抱えた人たちを実際のリハビリを通して支援する役割が言語聴覚士には求められます。
ただ、高齢者を対象とする障害者福祉施設と、子供を対象とする障害児療養施設とでは、気をつける点や意識しなければいけないことが異なります。
そのような違いを知った上で、転職先として選択することが大切です。

老人保健施設

老人保健施設も言語聴覚士の需要が高い職場の一つです。
老人保健施設における言語聴覚士の仕事は、脳梗塞などの病気や、加齢によって生じる言語や聴覚障害を持った人たちに対する言語訓練などのリハビリが主になります。
また、そのようなリハビリ業務だけでなく、利用者さんの家族へのアドバイスや相談も、老人保健施設で働く言語聴覚士に求められる役割の一つです。そして、老人保健施設で勤務していると、ケアマネジャーなどとの関わりも多くなります。
老人保健施設は、医療と介護の中間施設であるため、医療分野だけでなく、介護分野に関しても学ぶことができます。
このように、老人保健施設へ転職すると医療に関連する職種の人々だけでなく、介護関連職種の人との関わりも多くなります。そのため、介護分野に興味がある人にはおススメの転職先です。

言語聴覚士の資格を活かせる職域

既に述べたように、言語聴覚士の資格を活かすことができる転職先はたくさんあります。しかしそうはいっても、こうした職場の全てで言語聴覚士を雇っているわけではないため、まだまだ働き口は少ないといえます。
ただ、言語聴覚士の資格を活かすことができれば、まだまだ言語聴覚士の職域を広げることは可能です。
そこで以下に、言語聴覚士の資格を活かした職域について記します。

働く領域が狭いことは事実

言語聴覚士が働く領域は、理学療法士や作業療法士など他のリハビリ職者と比較して狭いというのは事実です。
例えば、理学療法士や作業療法士は身体の全体的な運動機能について学びます。その知識を活かして、病院や介護施設などだけではなく、スポーツジムのインストラクターやスポーツトレーナーなどとして活躍することもできます。
その一方で、言語聴覚士が対象とする症状は主に「失語症」「摂食嚥下障害」といったような、口や喉などの顔面周囲に起こるものになります。
そのため、専門的に学ぶ領域が脳神経や顔面周囲に関することが中心になります。その結果、理学療法士や作業療法士のようにスポーツなどのさまざまな分野で働くことは難しくなります。実際に、病院やデイサービスやデイケア、訪問リハビリといった介護保険施設以外で働く言語聴覚士は少ないです。
また病院であっても、処方される疾患名は理学療法士や作業療法士であれば「整形疾患」「呼吸器疾患」「循環器疾患」「脳血管疾患」など、さまざまなものがあります。
一方で言語聴覚士の場合、処方される疾患名は「脳血管疾患」と「廃用性症候群」が大半を占めます。
このように言語聴覚士は、働くことができる場所が限られています。またその中でも、言語聴覚士によるリハビリが処方される疾患名は、理学療法士や作業療法士と比べるとかなり少ないです。こうしたことから、確かに言語聴覚士が働く職域が狭いということは事実だといえます。

職域拡大のチャンスは大きい

現状では、言語聴覚士の職域は狭いといえます。しかし逆に捉えると、言語聴覚士の仕事は「未開拓の領域が多く、まだまだ職域拡大のチャンスが眠っている」と考えることもできます。そのため、あなたが先駆者になって言語聴覚士の職域を広めることもできます。
例えば、自分の子供の言語発達が遅れていて悩んでいる人は少なくありません。またアナウンサーや歌手などで、「もう少し発声を上手く行いたい」「高い声域を出したい」「滑舌を良くしたい」などと考えている人も多くいると思います。
このような人達に対して、言語聴覚士であれば、専門的な知識を活かしてアドバイスをしたり、講習会を開いたりすることもできます。
おそらく、言語聴覚士でこのような取り組みを自費のサービスとして提供している人はほとんどいないのではないでしょうか。つまり、こうした自費サービスをあなたが実践することで、先駆者となることができます。
さらに、高齢者はどんどん増え続けています。そのため、病院で言語聴覚士のリハビリが処方される脳血管疾患や廃用性症候群の患者さん数も増加する可能性は高いです。そうなると言語聴覚士によるリハビリの需要も高くなります。
このように言語聴覚士は、未開拓の領域が多いだけでなく、今後も需要が増えていく職種だと考えられます。確かに、まだまだ転職先が少ないことは事実です。しかし、言語聴覚士は理学療法士や作業療法士よりもさまざまな可能性を秘めた仕事だといえます。
今回述べたように、言語聴覚士の資格を活かすことができる転職先は多くあります。ただ、そうした中で言語聴覚士を雇っているところは少ないため、あまり求人数が出ていないのが現状です。
また、言語聴覚士の職域は狭いのが現状です。しかし、言語聴覚士の知識や技術を活かすことで、開拓できる領域はまだまだたくさんあります。こうしたことから、言語聴覚士の資格を持っているあなたは、将来のさまざまな可能性を考えながら転職先を選ぶようにすることが大切です。


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