理学療法士が2年目、3年目で辞めて転職を考える理由と解消法
理学療法士(PT)で2年目、3年目というと、最も転職を考える人が多い時期になります。給料面や勉強の忙しさに不満や不安を感じやすいタイミングであるためです。
2年目、3年目は、勉強や新卒者の教育などで自分に使えるお金も時間も少なくなります。そのため、もっと給料・年収が良くて勉強が忙しくない職場へ転職したいと考えて行動する理学療法士が多いのです。
不満や不安を感じたときに、転職という選択をするのは良いでしょう。ただ、「とにかく今の不満や不安を解消したいから」と焦って転職すると失敗します。
転職する理由や目的を明確にした上で求人情報を正しく読み取り、今の悩みを解決できる職場へ転職することが大切です。そこで今回は、「理学療法士(PT)が2年目、3年目で辞めて転職を考える理由と解消法」について解説します。
もくじ
理学療法士の2年目、3年目における平均年収、忙しさ
転職を考えているのであれば、まずは自分と同じ立場にある人達の状況を知ることが大切です。思っているより自分の状況が悪くないという可能性もあるためです。
例えば、あなたが「給料が低いから転職したい」と考えているとします。しかし実際には他の職場に比べると年収が高かったとしたら、転職することで年収が下がってしまうということになりかねないのです。
そうならないようにするためも、まずは理学療法士2年目、3年目の現状を知ることが重要になります。
例えば理学療法士2年目、3年目の平均年収・給料は、厚労省が報告している2019年の賃金構造基本統計調査から算出できます。
出典:2019年賃金構造基本統計調査
この表では、「決まって支給する現金給与額」が月収、「年間賞与その他特別給与額」が賞与(ボーナス)だと考えてください。また働き始めて数年は年収に男女差はほとんどないため、男性の給料だけで計算します。
理学療法士は大卒(4年制)が半数以上であるため、新卒時の年齢は22~23歳です。また新卒時は賞与が1回分しか出ないため、少ないです。表の賞与欄を確認すると20~24歳の賞与は明らかに低いため、20~24歳は新卒時の給料だと考えられます。
そうなると25歳が2年目となり、25歳~29歳は2年目~6年目の年収であるといえます。そこでここでは、25~29歳年収を2年目、3年目の給料として考えて算出します。以下が2年目、3年目の理学療法士の平均年収になります。
月収27万2,000円 × 12ヶ月 + 賞与61万4,000円 = 387万8,000円 |
2年目、3年目における理学療法士の平均年収は約380万円です。ただこの年収には5年目、6年目などの管理職になる年代の年収も含まれているため、実際には年収は350万円前後だと考えてください。
仕事は忙しいか?
2年目、3年目になると、1年目の時以上に仕事は忙しくなります。求められる役割が変わってくるためです。
1年目は業務自体に慣れることで精いっぱいですし、先輩や職場からもとにかく業務を問題なくできるようになることを求められます。その一方で2年目、3年目になると、1年目とは違った役割が期待されます。業務自体にも慣れ、後輩となる新卒理学療法士も入職してくるためです。
例えば、新卒理学療法士に対する教育指導などは、2年目、3年目の理学療法士が任せられる代表的な業務だといえます。
初めての仕事で慣れない新人に対して、休憩中や業務後に患者さんのリハビリ内容はもちろんのこと、書類作成業務などについて指導します。また業務終了後に、新卒者に向けた勉強会を任せられる職場も多いです。
当然、2年目、3年目であっても業務時間中は患者さんのリハビリを実施しています。リハビリ業務に加えて新卒者の指導となるため、非常に忙しくなるのです。
またいくら仕事に慣れたとはいえ、2年目、3年目だとまだまだ自分自身の勉強もしなければいけません。つまり、通常業務に新卒者の教育指導、自分自身の勉強と、いくつものことを並行して行わなければいけなくなるのです。
このように、2年目、3年目の理学療法士は仕事が忙しくなる傾向にあります。
理学療法士を2年目、3年目で辞めて転職する理由
理学療法士で2年目、3年目は、現場を1~2年経験して何となく仕事に慣れてきたタイミングになります。ただ仕事は忙しくバタバタしやすい時期であり、このタイミングで転職を考える人がたくさんいます。
2年目、3年目で辞めて転職を考える理由としては、主に以下の3つが挙げられます。
- 給料・年収が低い
- 昇給が少なく将来性がない
- 勉強が辛い
以下、それぞれについて解説します。
理学療法士の給料・年収が低い
理学療法士の中には、1~2年理学療法士として働いて「給料・年収が低い…」と感じる人が多いです。働き始めて1~2年目の給料自体は他業界と比較して低くないのですが、出ていくお金が大きいために給料が低いと感じやすいのです。
先に述べたように、2年目、3年目における理学療法士の平均年収は350万円前後になります。これは他業界と比較しても低くはありません。
ただ理学療法士で2年目、3年目というと、まだまだリハビリに関してわからないことが多く、勉強する日々を送ることになります。そのため、毎週のように勉強会に参加したり、参考書を買ったりするのです。
理学療法士の勉強会は、1日で1万円以上するものもたくさんあります。勉強会に月2回参加するだけで、2万円以上もかかるのです。また県外での勉強会であれば、交通費や宿泊費も必要になります。
また理学療法士が読む医学書は、平均して1冊5,000円程度します。中には1万円を超える書籍もあり、本を買って勉強するためにも相当なお金が必要になるのです。
つまり、「理学療法士の給料は低くないけれども出費が大きい」という悩みを抱えて転職を考えることになります。
また2年目になると、給料から住民税が引かれるため、1年目と比較すると月の手取り額が1万円前後少なくなります。住民税は前年度の所得にかかる税金であるため、就職して1年目は支払わなくて良いのです。
住民税の存在も、2年目になると「給料が少ない」と感じる大きな要因になります。こうした理由で給料や年収が少ないと悩み、転職を考える理学療法士は多いです。
昇給が少なく将来性がない
また2年目、3年目になると昇給して給料が上がることを期待します。ただ、残念ながら理学療法士の昇給は非常に少ないのが現状です。2年目にその昇給の少なさを実感して、将来性がないと考えて転職を考える人もたくさんいます。
理学療法士の昇給額に関しても、厚生労働省が報告している賃金構造基本統計調査が参考になります。
出典:2019年賃金構造基本統計調査
表中の20~24歳、25~29歳の枠を確認すると、平均年齢が23.4歳から27.3歳と4歳高くなって月収は3万円(20~24歳の月収24万2,000円 - 25~29歳の月収27万2,000円)アップしています。
つまり、これだけ見ると1年で平均5,000円昇給しているといえます。1年間で月5,000円の昇給であれば、そこまで悪くないと感じるのではないでしょうか?
ただ25~29歳となると、管理職となる理学療法士も増えてきます。管理職になると管理職手当が付くため、月収は一気に上がるのです。この調査にはそうした管理職で給料が上がった人も入っているため、一般職であれば実際の昇給額はもっと少なくなります。
昇給は1年で月1,000~3,000円が現実的だと考えてください。私が2年目、3年目になったときの昇給額は1年で月1,500円ずつでした。職場が変わっても昇給額は1年で月に1,000円であり、ほぼ同じでした。
公務員理学療法士であれば、おおよそ1年ごとに月5,000円の昇給が見込めます。ただそうでなく一般の病院であれば、昇給は1年で月1,000~3,000円と低く、将来性がないと感じる人も多いです。
勉強が辛い
理学療法士は、学生時代よりも働き始めてからの勉強が大変になります。特に1年目は現場のことが何もわからないため、非常に勉強が辛いと感じる人もたくさんいます。
実際に私は、1年目のときに患者さんの状態がわからなくて凄く悩んでいました。いくら勉強しても思い通りにリハビリが進まず、本当に辛いと感じていたことをよく覚えています。
こうした経験をして2年目になると「いつまでこの勉強の辛さが続くのだろうか…」と考える人もいます。特に勉強熱心な職場であれば、先輩から常に勉強をするようにプレッシャーがかかります。
また先に述べたように、勉強熱心な職場だと2年目になると新人のために勉強会を開催しなければいけない可能性が高いです。
自分自身が勉強で悩んでいる中で、さらに後輩にも教えなくてはいけなくなると、どんどん勉強が辛くなります。業務や自分の勉強だけでなく、後輩に教える準備などで時間も圧迫されて追いつめられる人も多いのです。
このように勉強熱心な職場に就職すると、2年目、3年目でも勉強の辛さが続いて転職を考える人もたくさんいます。
2年目、3年目の転職で失敗しないポイント
ここまで述べたように、2年目、3年目では「給料・年収への不満」「昇給の低さからくる将来性への不安」「勉強の辛さ」から転職を考える人が多いです。ただ、転職すれば必ずそれらの問題が解消するかというと、そうではありません。
現状に不満や不安があるから、とにかく別の職場へ転職しようとして行動すると失敗します。転職への気持ちが強まっているときほど、転職は慎重に行わなければいけないのです。
2年目、3年目で転職するときには、まずは転職する理由・目的を明確にするようにしましょう。
転職するということは、必ず何かしらの理由・目的があります。理由や目的がなければ転職しようと考えないはずです。
例えば「給料が低い」という理由であれば、「年収を上げる」という目的で転職します。他にも「勉強が辛い」という理由であれば「勉強がきつくない職場で働く」という目的になります。
転職するときには、こうした理由と目的を明確にすることが大切です。理由と目的が明確でないと、また同じ悩みを抱える職場へ転職する可能性があるためです。
例えば「給料が安い」と思って転職したのに、深く考えずに今の職場よりも少し月収が高いと思って転職したら「福利厚生や賞与(ボーナス)が低くて、結局年収があまり変わらなかった」ということはよくあります。
このように転職する理由と目的が明確でないと、転職先も何となくで決めてしまい失敗するのです。
求人から転職先の条件を正しく読み取る
また理由や目的が明確であっても、求人票の情報を読み取れないと転職後に失敗します。求人には、求職者に対して良く見えるように書かれているためです。
例えば以下は、東京にあるクリニックの理学療法士求人になります。
求人に「年収が600万円以上可能」とあります。これだけ見ると「もの凄く高い年収がもらえる好条件の求人だ」と思います。確かに、条件次第では高収入を得ることができるのでしょう。
ただ給料欄に「385万円~613万円」とあるため、385万円の求人と考えるのが妥当です。基本的に年収や月収に幅を持たせてある求人では、転職時は記載されている最低額が支給されると考えるようにしてください。
もちろん、あなたのこれまでの経験や転職先の条件がマッチして、最初から高い年収をもらえる可能性もあります。この求人でも、年収600万円を超えなくても500万円という条件で採用してもらえるかもしれません。
どちらにしても、もし好条件の求人を見つけたときには転職サイトの担当エージェントを介して細かい条件面を確認した上で応募することが大切です。そうすることで、求人の条件を正しく読み取れるようになります。
このように、求人の条件は正しく読み取ることが重要です。
転職先の特徴を求人から読み取る
求人の条件だけでなく、職場の特徴も求人から把握することも大切です。表面上の情報だけだと、職場が何に力を入れているかがわからないため、転職後にミスマッチが起こる可能性があります。
例えば以下は、兵庫県にある整形外科クリニックの理学療法士求人です。
求人の表面だけだと「教育充実」とありますが、そこまで忙しい印象は受けないのではないでしょうか? しかし求人の詳細を確認していくと、以下のような記載があります。
給料例の欄に「時間外手当」とあります。これは、時間外の残業が当たり前のようにあることが予測できます。また理学療法士長からメッセージに「リハビリ科内でのカンファレンスや勉強会を随時行っていくことで」「スキルアップを図っていきたい」とあります。
これらの情報から、勉強やスキルアップを求められる職場である可能性が高いと考えられます。もしあなたが、勉強が辛くて前職場を辞めたのにこの職場へ転職すると、また同じ状況になってしまう可能性があるのです。
このように転職するときには、求人から転職先の特徴まで読み取ることが重要になります。
理学療法士が2年目、3年目の転職で失敗しないためには
理学療法士(PT)の2年目、3年目となると、給料や仕事量などの問題で転職を考える人が多い時期です。
確かに、2年目や3年目は昇給もなく税金も増えるため月の手取りは減り、新人教育などの仕事も多くなります。そうしたときに、現状を変えようと転職するのは良いです。ただ、転職するときには焦って行動しないように注意しましょう。
まず、しっかりと転職する理由と目的を明確にすることが大切です。その上で、求人情報を正しく読み取り、転職の目的を達成できる職場を見つけて転職することが重要にになります。
転職の理由や目的が明確でなかったり、求人情報を正しく読めなかったりすると、また転職後も同じ悩みを抱える職場へ転職してしまう可能性が高いです。
せっかくの転職で失敗しないように、正しい行動をするようにしましょう。以上の点を踏まえて転職活動を行うことで、転職によって2年目、3年目に起こりやすい悩みを解消できるようになります。
リハビリ関係者が転職を考えるとき、転職サイトを活用するとより自分の希望に沿う求人を見つけることができるようになります。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉まで行うのは現実的ではありません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や施設を含め、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって特徴が大きく異なります。例えば、電話だけの対応で素早さを重視する会社があれば、面接まで同行することで難しい案件への対応を得意としている会社もあります。他には、大手企業に強みを発揮する会社があれば、地方求人を多く保有している会社もあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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