国立病院機構の理学療法士転職求人における給料や昇給額、採用倍率

理学療法士(PT)の中には、国立病院機構に勤めている人もいます。国立病院機構は公務員ではないものの、公務員と似た待遇を受けられる職場です。給料や賞与、昇給額は一般の病院と比べると圧倒的に高いと考えてください。

ただ国立病院機構はグループで経営しているため、理学療法士でも転勤や異動があります。また人気があるため、採用試験の倍率が高いです。さらに採用試験で基準を満たしても、グループ内の病院で欠員が出ないと採用にならないという特徴もあります。

国立病院機構への転職を考えたときには、こうした国立病院機構独自の特徴について理解しておくことが大切です。そこで今回は「国立病院機構の理学療法士転職求人における採用募集に関する給料や昇給額、採用倍率」について解説します。

もくじ

国立病院機構の理学療法士は公務員ではない

国立病院機構は元もとは国家公務員という立場にありましたが、現在は「独立行政法人」として運営されています。また以下の6つの地域に分かれて運営されており、それぞれでグループとして数十個の病院を経営している組織です。

  • 北海道東北
  • 関東信越
  • 東海北陸
  • 近畿
  • 中国四国
  • 九州

例えば九州であれば、以下のように各県に複数個ずつ病院があります。

国立病院機構は独立行政法人という大きな一つの組織の中に地域ごとのグループがあり、さらにその中に各県ごとに病院が配置されているのです。理学療法士が国立病院で働くときには、病院ではなくグループでの雇用になります。

それゆえに、国立病院で働くときには一般病院と違った注意点があります。特に「就職後の配属先」「転勤・異動」に関しては、国立病院だからこその特徴を理解しておくことが大切です。

独立行政法人は転勤・異動あり

国立病院機構の場合、採用後に勤める病院は自分では選べませんし、入職後に転勤・異動の可能性もあります。病院ごとではなく各グループでの採用となるためです。

例えば、国立病院機構関東信越グループの試験を受けたとします。国立病院機構の場合、統一試験に合格すれば内定がもらえるわけではなく「採用候補者名簿へ登載」という状態になります。

採用候補者名簿への登載は、仮採用のような状態と考えてください。この時点では、まだ国立病院へ勤務できるかどうかは不明です。

その後、採用候補者名簿に登載されたグループ内の病院の人員状況に応じて、採用内定通知書が送られます。例えばある病院で退職者が出て欠員となると、採用候補者名簿に登載された人の中から最適者が選ばれて配属されるのです。

このとき、グループ内にあるどの病院へ配属されるかはあなた自身では選べません。グループ内で欠員が出た病院に配属されるためです。例えば関東信越グループであれば、東京にある病院か神奈川県にある病院か選択できないということになります。

さらに、配属後も人員状況に応じて転勤や移動の可能性もあります。例えば東京の国立病院に勤めていて神奈川で欠員が出た場合に、いきなり神奈川の病院への転勤を命じられる可能性もあるのです。

そのため国立病院への転職は「多くの病院でさまざまな経験をしたい」と考えている理学療法士にとってはメリットだといえますが、転勤を望まない人にとってはデメリットだといえます。

このように国立病院機構での採用はグループごとであり、配属も選べませんしグループ内での転勤や移動もあることを知っておきましょう。

国立病院機構における理学療法士採用試験の内容

国立病院機構の採用試験は、公務員ではないため一般教養試験などはありません。先に述べたように以前は国の機関であり国家公務員であったものの、現在は独立行政法人として運営されています。そのため、国立病院へ就職・転職する理学療法士は公務員試験を受けなくて良いのです。

公務員であると、一般教養試験のような理学療法士とは関係のない勉強をしなければいけないため、試験対策に苦労するケースが多いです。

その一方で国立病院では公務員試験とは違い国立病院機構独自のものになっているため、公務員よりも一般病院に近い形と考えてください。例えば以下は、近畿グループにおける理学療法士採用における流れです。

日程は各グループや年度によって異なりますが、基本的には「応募(必要書類の提出) → 書類選考 → 一次選考(適性試験、専門試験) → 二次選考(面接試験)」という流れになります。

書類選考以外に一次選考、二次選考と2段階となっており、一般病院よりも採用までの過程は多いです。ただ一般教養試験などはないため、採用試験の難易度は一般病院と公務員の中間位と考えてください。

このように国立病院の採用に関しては、書類選考も含めると3段階の過程となります。そして二次採用までで採用基準を満たせば、採用候補者名簿への登載されて待機状態となるのです。

国立病院の筆記試験は専門試験と小論文が基本

国立病院の一次選考における適性試験や専門試験の内容は、グループによって異なります。理学療法士の場合、専門試験と小論文が求められるケースが多いと考えてください。

中には専門試験がなく小論文だけというグループもありますが、両方あると考えておいた方が無難です。

そうはいっても、専門試験は国家試験に受かるレベルの知識があれば十分に解答できる問題だと考えてください。小論文に関しても、一般的な病院の試験で求められるレベルの内容であることが多いです。

もちろん、全く何も準備していないというのは問題ですが、国立病院だからと特別な筆記試験対策は必要ないことを知っておきましょう。

採用試験の倍率は高い?

理学療法士における国立病院機構の採用試験は、基本的に倍率が高いです。公務員ではないとはいえ、規模も大きく一般的な病院と比較して待遇が良いことから、たくさんの人が応募するためです。

また先に述べたように、国立病院機構の理学療法士として働くためには採用試験で基準を満たすだけでなく、グループ内病院で欠員が出ることが必須になります。つまり倍率が高い採用試験で頑張って基準を満たしても、状況によっては働くことができないのです。

そこで国立病院機構への就職・転職を目指す理学療法士は、一般病院の採用試験も並行して受けます。

一般病院も並行して受けることで、国立病院の採用試験で基準を満たせなかったり、欠員が出ずに配属されなかったりしたときのリスクを分散しておくのです。もし不採用になっても、並行して他の病院に内定をもらっておけば、仕事を失うことはなくなります。

このように倍率が高い上に採用が不明確であるため、新卒であっても中途採用であっても、国立病院一つに絞るのは非常に危険だということを知っておきましょう。

理学療法士の国立病院機構における給料、年収

なお、国立病院機構における理学療法士の給料は「独立行政法人国立病院機構 職員給与規定」によって一律に決められています。公務員ではないものの、半公務員のような扱いになるため、給与体系は「俸給表(ほうきゅうひょう)」によって決まっているのです。

そのため、国立病院の理学療法士における給料は地域差がほとんどありません。また基本的に国立病院機構の理学療法士は国家公務員と同じ扱いであり「医療職基本給表(二)」の給料が支給されます。

出典:国立病院機構 医療職基本給規定

基本給表は公務員と同じように「号」と「級」で分けられており、それぞれに当てはまる給与額が支給されることになるのです。例えば初任給においては、以下のように「大学卒」と「短大3卒(専門学校)」で分けられています。

出典:国立病院機構 医療職基本給規定

大学卒の理学療法士であれば「1級21号」、専門学校卒であれば「1級17号」となります。級と号による給与額は以下の表のように決められています。

出典:国立病院機構 医療職基本給規定

大学卒であれば、1級の21号に当たるため基本給は18万5,000円、専門学校卒であれば1級の17号になるため基本給は17万4,000円となります。これは、先に述べたように国立病院機構であればどの地域・グループであっても一律です。

俸給表における横軸である「級」は役職によって、縦軸である「号」は経験年数によって変わります。役職がつけば級が、勤続年数が長くなるほど号が上がるのです。

一般的な理学療法士の転職では、都心部に近いほど給料が高い傾向にあります。その一方で国立病院であれば、公務員と同じように田舎であっても都心部と同程度の給料をもらうことができるのです。

このように国立病院における理学療法士の給料は、一律に規定されていることを知っておきましょう。

国立病院の昇給は1年で約4%

また国立病院の場合、昇給に関してもおおよそ決められています。国立病院の理学療法士は、1年で月の基本給が約4%昇給するのが基本です。以下は国立病院の募集要項ですが、昇給は約4%とあります。

ただ基本給の4%といわれてもイメージがつかないと思いますので、新卒者の基本給を元に年間の昇給額を算出します。

先に挙げたように、大学卒の理学療法士における国立病院における基本給は18万5,000円です。1年間勤めると4%の昇給となりますので、1ヶ月の基本給が「18万5,000円 × 昇給4% = 7,400円」上がることになります。

理学療法士における平均的な昇給額は、1年で1,000~3,000円です。それを考えると、新卒で最も基本給が安い時期でも1年間で7,000円以上も昇給するのは、非常に昇給額は良いといえます。

国立病院機構に勤める理学療法士の平均給料はどれくらいか?

それでは、国立病院機構に勤める理学療法士の平均給料、年収はどれくらいになるのでしょうか? 先に述べたように基本的には国家公務員に準ずる給料となっているため、国家公務員として働いている理学療法士の平均給料を確認すればわかります。

以下は、人事院が報告している「2018年国家公務員給与の実態」にある国家公務員の平均給与額です。

出典:2018年 国家公務員給与の実態

先に述べたように理学療法士は医療職棒給表(二)になります。平均棒給額が30万9,000円であり、これにさまざまな手当が加わり平均の月収は35万3,000円となります。国立病院の場合、住居手当や通勤手当、扶養手当が公務員並みに優れています。そのため、月給は高くなるのです。

例えば、国立病院の福利厚生や手当は以下のようになっています。

表から、住居手当が上限で月2万7,000円、通勤手当が上限で5万5,000円まで支給されることがわかります。これだけでも、全額支給されれば月収は8万2,000円プラスになりますし、加えて扶養手当なども支給されるのです。

一般的な病院であれば住宅手当は2万円前後、通勤手当も2万円前後になります。住宅手当も通勤手当も支給されない病院もたくさんあります。それを考えると、国立病院の福利厚生が充実していることは明らかです。

理学療法士で月給が35万円を超える求人はほとんどないため、国立病院に勤めると理学療法士としては高収入を得られるといえます。

国立病院の賞与(ボーナス)を含めた平均年収はどれくらいか?

また国立病院機構の理学療法士は、賞与(ボーナス)が一般的な病院よりも多いです。一般的な病院における賞与額は、おおよそ年間で基本給の3ヶ月分となります。それに対して国立病院は、1年間で基本給の4.2ヶ月分支給されるのです。以下は国立病院の理学療法士求人になります。

業務手当(ボーナス)の欄に、「年間基本給等の4.2ヶ月分」とあります。先ほど挙げたように、国立病院における理学療法士の平均基本給額は30万9,000円でした。つまり、国立病院の理学療法士の平均賞与額は「基本給30万9,000円 × 4.2ヶ月分 = 129万7,000円」となります。

理学療法士の年間平均ボーナスは、2018年の賃金構造基本統計調査では約66万円です。そのため国立病院で勤めると、一般的な理学療法士の約2倍の賞与が支給されることになります。

また国立病院の理学療法士における手当、賞与を含めた平均年収額は、以下のように算出できます。

月給35万3000円 × 12ヶ月 + 賞与122万円 = 545万6000円

理学療法士で年収500万円超えというと、高額求人に当たります。このことから、国立病院における理学療法士は非常に待遇が良いといえます。

ただ注意しなければいけないのは、国立病院の平均年齢が46歳であるということです。先に述べたように国立病院は昇給額が高いため、経験年数を重ねるほど給料は高くなります。そのため、逆に年齢が若いときには年収額も低いと考えておいてください。

国立病院の高い年収は、長く勤めて初めて達成できるのです。

理学療法士が国立病院機構への転職を成功させるためには

国立病院機構への転職を考えたときには、以下の5点を理解しておくことが大切です。

  • 国立病院機構はグループで分けられている
  • グループ内の病院であれば県外でも転勤、異動がある
  • 採用試験は書類審査と筆記試験、面接試験の3つ
  • 採用試験で基準を満たしても欠員が出ないと採用にならない
  • 給料や昇給、賞与(ボーナス)などの待遇は一律して高めであり地域差がない

一般病院よりも待遇は良く、公務員よりも採用試験は通りやすいのが国立病院の特徴だといえます。そのため転勤や異動が苦ではなく、長く安定して働きたいと考えているのであれば、国立病院の理学療法士はおススメできます。

ただ、採用試験の基準を満たしても働けるかどうかが直前までわからないのが国立病院のデメリットです。基本的には、転職サイトなどを利用して複数の病院と並行して転職活動することが基本になります。

国立病院への転職を考えているのであれば、以上の点を理解した上で転職活動を行うようにしましょう。


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