理学療法士(PT)がクリニック転職を成功させる求人や仕事内容

理学療法士(PT)としてクリニックへの転職を望むなら、まず「クリニックの求人情報」の正しい見方を知っておく必要があります。

なぜなら、クリニックと病院は、その役割も仕事内容も、待遇も全く異なるからです。求人情報で見るべきポイントも当然変わってきます。

例えば、クリニックでは「予約制かどうか?」を確認することが非常に重要です。 予約制でないクリニックも多く、予約の有無で仕事の忙しさが劇的に変わるためです。

ほかにも、「一日の平均施術数」「転職後の配属先」「福利厚生の充実度」「総合実施計画書の作成頻度」など、クリニックだからこそ必ず事前に把握すべき点があります。

これらを確認せずに入職すると、「こんなはずじゃなかった…」と転職後に後悔することにも繋がりかねません。

そこで今回は、「理学療法士(PT)がクリニックへ転職する際に必ず確認すべきポイント」について、実際の求人票の例も交えながら詳しく解説します

目次

クリニックで働く理学療法士(PT)の仕事内容とは?

クリニックは「診療所」とも呼ばれ、法律上「入院患者のためのベッドが無床、もしくはあっても19床以下の医療施設」を指します。 そのため、リハビリは入院患者さんではなく、通院される患者さんが対象となります。

また、クリニックといっても「循環器内科」や「脳神経外科」など様々ですが、理学療法士が働くクリニックといえば、そのほとんどが「整形外科クリニック」です。

病院との違い:「治療」がメイン

整形外科クリニックでの主な業務は、整形外科的な診断を受けた患者さん、つまり「痛みの緩和」を目的とした方へのリハビリです。

病院では「立ち上がり訓練」や「歩行訓練」といった動作訓練がリハビリの中心になることも多いですが、クリニックでは異なります。 徒手療法(手を使って筋肉や関節の状態を改善する技術)やストレッチ、筋力トレーニングといった「機能改善」を目的としたリハビリが中心となります。

また、ほとんどの患者さんがご自身で通院されるため、歩行やトイレ動作の介助といった介護的な業務に理学療法士が関わることはほとんどありません。

つまり、クリニックの理学療法士には「リハビリ」というよりも「治療」という側面の仕事が強く求められるのです。 病院でのリハビリとは違うイメージの、「患者さんの機能改善」が主な業務であることを理解しておきましょう。

【タイプ別】クリニック求人の特徴と仕事内容

それでは、整形外科クリニックの理学療法士求人には、どのようなものがあるのでしょうか? 整形外科クリニックといっても、主に高齢者を対象とする「一般的なクリニック」と、スポーツ選手を対象とする「スポーツクリニック」の2つに大別されます。

対象となる患者層や求められる技術が異なるため、それぞれ解説します。

一般的な整形外科クリニック

一般的な整形外科クリニックは、主に高齢者を対象としています。 腰やひざ、肩の痛みを訴える患者さんに対し、痛みを緩和するための徒手療法、ストレッチ、運動療法、物理療法(電気治療や温熱治療など)を行うことがメインです。

そのため、整形外科クリニックでは、これらの技術を使って「痛みをどう緩和していくか?」という能力が求められます。

数は少ないですが、「手術後に自宅へは帰ったものの、仕事復帰ができていない人」の職場復帰へ向けたリハビリなども、クリニックの理学療法士の仕事になります。

なお、以下は大阪府にある一般的な整形外科クリニックの求人例です。

このように、クリニックの業務内容は「リハビリテーションならびに付帯業務」と記載されています。

リハビリテーションは、先に述べた患者さんへの治療です。 クリニックにおける付帯業務とは「総合実施計画書(リハビリの計画や目標を記載する公的な書類)の作成」「カルテ記入」「カンファレンス参加」などがメインです。

カンファレンス(多職種連携会議)に関しては、総合病院と比較すると担当患者数が多いため、頻度は少ない傾向にあります。頻繁に行っている診療所でも、週1回程度でしょう。

また、地域活動に積極的なクリニックであれば、高齢者のサロンやイベントでの講演などを理学療法士が担うケースもあります。

こうした一般的な整形外科クリニックの求人は、比較的見つかりやすいです。 ただし、一般的な病院と比較すると求人数は少なく、地域やタイミングによっては、なかなか見つからない場合もあります。

(実際、筆者は広島のクリニックから熊本へ転職する際、診療所への転職を希望していましたが、求人数が少なく、希望の求人が見つかりませんでした。この時はリハビリ職専門の転職サイトに登録し、担当エージェントに紹介してもらうことで、希望の診療所へ転職することができました。)

スポーツクリニック

スポーツクリニックでは、一般的な整形外科クリニックとは対象となる患者層も、求められる役割も異なります。また、求人はさらに見つかりにくいのが実情です。

スポーツクリニックになると、高齢者だけでなく中学生や高校生、大学生などのスポーツ選手のリハビリも行います。そのため、スポーツに特化した知識や技術が必須です。

例えば、スポーツ復帰のためには、痛みが取れるだけでは不十分です。競技に必要な筋力・動作を回復させなければいけません。 理学療法士には、担当する選手の各競技に関する知識はもちろん、パフォーマンスを高める専門的な知識・技術も求められます。

また、クリニック内での業務だけでなく、チームの練習や試合に帯同するケースもあります。その際には、急な怪我に対する「応急処置」や「テーピング」などの技術も必要です。

このように、スポーツクリニックでは学校では習わない知識や技術が求められることを知っておかなければいけません。

以下は大阪のスポーツクリニック求人例ですが、次のような募集条件が出されています。

スポーツクリニックでは、新たに学ぶべきことが多いため、院内での研修が充実している職場が多いです。 「専門スキル・知識を身につけたい方歓迎」とあるように、特に向上心の高い人が求められます。

理学療法士がスポーツクリニックへの転職を考えているなら、院内研修の頻度や内容といった充実度も確認しておくことが必須です。

ただし、スポーツクリニックの求人数は非常に少ないため、できるだけ早めに転職サイトへ登録し、転職エージェントに希望を伝えて探してもらうようにしましょう。

新卒・未経験可のクリニック

中には、新卒1年目からクリニックへの就職を考えている理学療法士も多いでしょう。(筆者も新卒1年目から整形外科クリニックへ就職しました。)

訪問リハビリなど院外の仕事は経験を問われることが多いですが、クリニックの求人では、経験を問われない(新卒可)ことが比較的多くあります。

以下は東京都千代田区にあるクリニックの求人ですが「新卒可」と記載されています。

一般の診療所は、病院ではあまり求められない徒手療法などの細かい技術が必要となるため、新卒からの教育に熱心であるところが多いです。

その一方で、新卒で研修もなく患者さんを対応させられる診療所も存在します。 正直なところ、新卒で何も教わらずに患者さんを対応するのはかなり厳しいです。そのため、こうしたクリニックは避けるべきです。

以下は兵庫県の求人ですが、教育を強みとして打ち出していることがわかります。

新卒からクリニックへの転職を希望しているなら、こうした「教育充実」や「院内研修あり」という求人を見つけて応募すると良いでしょう。

研修の具体的な内容(知識や技術)や頻度、時間などの詳細は、求人票に書かれていないことがほとんどです。必ず事前に転職エージェントなどを通して確認しておきましょう。

クリニック転職のメリット・デメリット

クリニックへの転職には、病院や介護施設とは異なる、特有のメリットとデメリットが存在します。

メリット:日祝休みで休日が固定される

理学療法士がクリニックで働く最大のメリットは「休日が固定されている」ことです。 クリニックでは、基本的に日祝日が休みになります。

入院施設がある病院だと、土日祝日関係なく365日の勤務体制(シフト制)となることが多いです。 その一方で、クリニックは院長一人が診察しているケースも多く、医師が休診日や学会参加日を確保するため、固定で日祝日休みのところが多いのです。当然、休診日は理学療法士も休みになります。

以下は、東京のクリニックの求人例です。

求人の大半が、このように「日祝日休み」となっています。(土曜日は午前診療のみ、というケースが多いです) 日祝日が固定で休みであれば、子どもが小さな女性や、家族との時間を大切にしたい人にとっては、非常に働きやすい環境です。家族との時間を優先したいのであれば、クリニックはおすすめです。

デメリット:業務がハードで体力的に辛い

休日が固定されるという大きなメリットがある一方、クリニックは業務がハードで体力的に辛いというデメリットがあります。 これは、診療報酬(医療行為の対価)の仕組み上、1人の患者さんと接する時間が短く、担当する患者数が多くなるためです。

例えば、病院であれば1人の患者さんに60分以上かけることも珍しくありません。そのため、どれだけ頑張っても1日に担当する患者さんは7人前後でしょう。

その一方でクリニックは、短い場合は一人20分しか時間が取れず、多い日は1日20人を超える患者さんを担当することになります。 以下は大阪のクリニック求人ですが、1日の平均施術数が記載されています。。

1日に20~24人の施術をするのは、実際のところかなりハードです。 体力がなかったり、腰痛持ちだったりする場合、1日の仕事をこなすだけで精一杯になります。

(筆者も広島で勤めたクリニックでは、1日の平均担当者数が20人を超える月が大半でした。時間に追われてバタバタし、1日の終わりにはいつもぐったりしていました。)

このように、クリニックの業務は体力的にハードだというデメリットがあります。特に、病院や介護施設で働いていた方にとっては、想像しているより仕事内容がハードだと考えておきましょう。

給与・年収のリアル:都心部ほど高い傾向

クリニックにおける理学療法士の年収には、かなりバラつきがあり、勤務地(地域)が大きく関係していることが多いです。 地方と比較して、東京や大阪などの都心部は給料が高い傾向にあります。

例えば、以下は東京にあるクリニックの求人ですが、モデル年収は「452万円~」となっています。。

理学療法士の平均年収が約400万円であることを考えると、悪くない金額です。

その一方で、同じクリニックでも以下は熊本の求人です。

この求人では、モデル年収が「238万円~340万円」となっており、東京都の求人と比較すると、大きな差があります。

正直なところ、クリニックの仕事内容や勤務日数は、地域によって大きく変わるわけではありません。 基本的に年収が高いところは患者数が多く、業務が忙しい(施術数が多い)傾向にあります。都心部のクリニックは患者数自体が多く、売上もあるため給料が高いのです。(もちろん物価の違いも影響しています)

そのため、理学療法士が年収の高いクリニックへの転職を目指すなら、できるだけ都心部に近いクリニックへの転職を検討しましょう。

【最重要】クリニック転職で失敗しない!必ず確認すべき4つのポイント

ここまでの内容を踏まえ、理学療法士がクリニックの求人を探して転職する前に、必ず確認すべき最重要ポイントを4つにまとめます。

病院とは違い、クリニックではこれら4つの情報を求人票から読み取り、もし記載がなければ必ず確認する必要があります。

1. 完全予約制の有無

クリニックの理学療法は、時間毎に予約を取る場合と、予約を取らずに来院された順に対応する2つのパターンがあります。

予約制のメリットは、日によって担当する患者さんの数にばらつきが少ないことです。 予約枠以上に患者さんが入ることはほとんどないため、落ち着いて患者さんに対応でき、一日の業務の見通しが立てやすくなります。

(筆者は完全予約制と予約がないクリニックの両方で働いた経験がありますが、断然、完全予約制の方が気持ち的にも時間的にも余裕があり働きやすかったです。)

予約制の有無は、求人票に記載されていることもありますが、記載していない求人の方が多いのが現状です。

このように記載があれば確実ですが、記載がない場合、確認せずに転職すると「予約なしで常にバタバタしている職場だった…」と後悔することになります。
必ず転職エージェントなどを介して、事前に予約制の有無を確認するようにしましょう。

2. 転職後の配置先(デイケア併設など)

クリニックの求人には、デイケアやデイサービスを併設している施設が多いです。 そのため「クリニック勤務」だと思って転職したのに、実際にはデイケアやデイサービスの配属になるケースがあります。

以下の千葉県の求人票のように、はっきりと「クリニック・デイケア・デイサービスの勤務」と書いてあれば分かりやすいです。

注意すべきは、明確に記載されていない求人です。
以下は神奈川県川崎市のクリニック求人ですが、一見するとクリニック業務しかないように感じます。

しかし、求人票の詳細を細かく見ていくと、以下のような情報が見つかります。

このように関連施設としてデイサービスや訪問リハビリが書かれている場合、最初は診療所勤務でも、すぐに配置転換でデイサービス勤務になる可能性もあります。

3. 福利厚生(病院より劣るケースも)

クリニックは、病院と比較して福利厚生が充実していないところが多い傾向にあります。

もちろん、クリニックでも福利厚生が充実しているところはあります。 こうした手当の有無は、手取り額に大きく影響します。

例えば、以下の求人は住宅手当、家族手当が支給されるクリニックの求人です。

もし住宅手当で1万5,000円、家族手当で1万円が付けば、それだけで月の手取り額が2万5,000円、年間で30万円の違いになります。

福利厚生に関して詳細がわからない時は、必ず転職エージェントを介して確認してもらいましょう。

4. 総合実施計画書の作成頻度

理学療法士は、担当する患者さん一人ひとりに対して、定期的に「総合実施計画書」を作成する必要があります。

病院であれば担当患者数が少ないため、毎月の作成でもそこまで負担になりません。 しかしクリニックでは、担当患者数が全体で100人近くなることもあります。そのため、総合実施計画書の作成頻度は、業務負担を左右する非常に重要なポイントです。

例えば、「3ヶ月に1回」の職場もあれば、「毎月」作成する職場もあります。 担当患者数が100人の場合、

  • 3ヶ月に1回 → 1ヶ月あたり約33枚作成
  • 毎月作成 → 1ヶ月あたり100枚作成

となり、作成枚数が約3倍も変わってきます。

クリニックに転職する際は、この作成頻度を必ず事前に確認しておくようにしましょう。

クリニック求人の特徴を知って転職を成功させる

理学療法士がクリニックへ転職する際に失敗しないためには、病院への転職とは異なる、細かな確認事項がたくさんあります。

しかし、限られた時間の中で、現在の仕事をこなしながら転職活動をするのは大変です。落ち着いて求人を探したり、求人票を隅々まで見たりする時間がないのが現実だと思います。

そうした時には、リハビリ職専門の転職サイトを上手く活用しましょう。 特にクリニックの場合、「予約制の有無」「配置先」「施術数」「計画書の頻度」などは、求人票に書かれていないことが多いです。

これらの注意点を意識しつつ、転職エージェントの担当者に求人の詳細を確認しながら、あなたに最適な職場を探すようにしましょう。

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