「言語聴覚士って、女性が長く働きやすい仕事なのかな?」 「私に向いている仕事なんだろうか…?」
キャリアについて真剣に考える20代、30代の女性にとって、専門職である言語聴覚士(ST)は魅力的な選択肢の一つですよね。しかし、実際に働く上でのメリットだけでなく、デメリットや大変なことも知っておきたい、と感じているのではないでしょうか。
こんにちは。医療・福祉分野専門のキャリアアドバイザーです。 この記事では、言語聴覚士を目指す女性が知っておくべき「働く上でのリアル」を、メリット・デメリットの両面から徹底的に解説します。
この記事を最後まで読めば、言語聴覚士という仕事がご自身のライフプランや価値観に合っているか、より深く理解できるはずです。ぜひ、あなたのキャリア選択の参考にしてください。
そもそも言語聴覚士(ST)とは?女性に人気の理由
言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist, ST)は、「話す」「聞く」「食べる」といった、人が生きていく上で欠かせない機能の専門家です。病気や事故、発達上の問題などでこれらの機能に困難を抱える方々に対して、評価・訓練・指導を行い、その人らしい生活を送れるよう支援します。
厚生労働省の調査によると、言語聴覚士の男女比は、女性が約8割を占めており、リハビリ専門職の中でも特に女性が多いのが特徴です。その背景には、後述するような女性がキャリアを築きやすいメリットが多く存在することが挙げられます。
女性が言語聴覚士(ST)として働く5つのメリット
では、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。多くの女性STが「この仕事を選んで良かった」と感じるポイントを5つご紹介します。
1. ライフステージの変化に対応しやすい【働き方の柔軟性】
働く女性にとって、結婚・出産・育児といったライフイベントはキャリアを考える上で非常に重要です。その点、言語聴覚士は多様な働き方が選びやすい職種です。
産休・育休制度の活用: 女性が多い職場のため、産休や育休の取得に理解があり、制度が整っている職場がほとんどです。先輩ママさんSTも多く、相談しやすい環境は心強いでしょう。
多様な雇用形態: 正社員としてキャリアを継続する道はもちろん、育児が落ち着くまでは「時短勤務」や「パート・アルバイト」として働くなど、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。
急な子供の体調不良などで休まなければならない時も、同様の経験を持つ同僚が多いため、理解を得られやすく、「お互い様」という雰囲気がある職場が多いのも大きなメリットです。
2. 共感力や丁寧さが活きる【専門性の高い対人援助職】
言語聴覚士が関わる患者さんは、突然言葉を失ったり、食事ができなくなったりと、計り知れない不安や喪失感を抱えています。そうした方々に寄り添い、信頼関係を築く上で、丁寧なコミュニケーションや相手の気持ちを汲み取る共感力が不可欠です。
もちろん性別に関わらず重要な資質ですが、相手の心情を細やかに観察し、根気強く丁寧に関わることが得意な方にとっては、その特性を最大限に活かせる専門職と言えるでしょう。リハビリを拒否されるような場面でも、相手の心を開き、モチベーションを引き出す場面で大きなやりがいを感じられます。
3. 高い専門性でキャリアを中断・再開しやすい【復職のしやすさ】
言語聴覚士は国家資格であり、その専門性は社会的に高く評価されています。一度、育児などで現場を離れたとしても、資格と経験があれば再就職しやすいのは大きな強みです。
全国各地に活躍の場があるため、パートナーの転勤などに伴って転居した場合でも、新しい土地で仕事を見つけやすい傾向にあります。ブランクがある方向けの研修会なども開催されており、学び直しをしながら現場復帰を目指すことも可能です。
4. 多様な職場で活躍できる【キャリアの選択肢】
言語聴覚士の活躍の場は非常に幅広いです。 例えば、
医療機関: 大学病院、総合病院、リハビリテーション病院、クリニック
介護・福祉施設: 介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、デイケア
小児分野: 小児科、療育センター、児童発達支援事業所
教育分野: 特別支援学校、地域の教育相談室
など、自分の興味・関心やライフステージに合わせて職場を選べるのも魅力です。急性期の医療現場で専門性を高めたい、地域に根ざして高齢者を支えたい、子供たちの成長を支援したい…といった多様なキャリアパスを描くことができます。
5. 身体的な負担が比較的少ない
同じリハビリ専門職である理学療法士(PT)や作業療法士(OT)と比較して、患者さんの移乗介助や長時間の体力を使う訓練が少ない傾向にあります。もちろん、全く体力を使わないわけではありませんが、身体的な負担が比較的少ないため、年齢を重ねても長く続けやすい仕事と言えるでしょう。
知っておきたい…女性が言語聴覚士(ST)として働く3つのデメリットと対策
多くのメリットがある一方で、事前に知っておくべき現実もあります。ここでは、代表的なデメリットと、それに対する対策や考え方をご紹介します。
1. 給与水準とキャリアアップの課題
言語聴覚士の給与は、医療専門職として安定していますが、大幅な昇給や高収入を得にくいという現実があります。特に、昇進の機会が限られていたり、管理職のポストが少なかったりする職場も少なくありません。
対策・考え方:
資格取得や専門分野の確立: 認定言語聴覚士などの資格を取得したり、嚥下障害や小児など特定の分野で専門性を高めたりすることで、資格手当やより良い条件での転職に繋がる可能性があります。
職場選び: 給与体系やキャリアパスが明確な法人を選ぶことが重要です。転職も視野に入れ、自分のスキルや経験が正当に評価される環境を探しましょう。
2. 精神的な負担(メンタルヘルス)
患者さんの人生に深く関わる仕事だからこそ、精神的な負担を感じる場面もあります。
コミュニケーションの困難さ: 失語症や認知症の患者さんとは、意思疎通がうまくいかず、もどかしい思いをすることがあります。時には、暴言やリハビリ拒否といった厳しい反応に直面し、精神的に傷つくこともあるでしょう。
感情労働: 常に患者さんに寄り添い、共感することが求められるため、知らず知らずのうちに感情を消耗してしまう「感情労働」の側面があります。
対策・考え方:
一人で抱え込まない: 悩んだ時は、上司や同僚に積極的に相談しましょう。経験豊富な先輩からのアドバイスが、突破口になることはよくあります。
オン・オフの切り替え: 仕事の悩みや感情をプライベートに持ち込まないよう、意識的にリフレッシュする時間を作ることが大切です。趣味や運動など、自分なりのストレス解消法を見つけておきましょう。
3. 女性が多い職場特有の人間関係
女性が多く働きやすい環境である一方、それが故の人間関係の難しさを感じる人もいます。価値観の多様な女性が集まる職場では、グループができたり、噂話が気になったりと、人間関係に気を遣う場面もあるかもしれません。
また、身だしなみ」についても、同性からの視線が厳しく感じられることがあるかもしれません。社会人としてのマナーはもちろん必要ですが、過度な指摘にストレスを感じる可能性もゼロではありません。
対策・考え方:
適切な距離感を保つ: 全員と深く関わろうとせず、仕事上のパートナーとして、敬意を持った適切な距離感を保つことを意識しましょう。
職場見学を重視する: 転職や就職の際は、必ず職場見学に行き、スタッフの雰囲気やコミュニケーションの様子を自分の目で確かめることが非常に重要です。
まとめ:自分らしいキャリアを築くために
今回は、女性が言語聴覚士として働く上でのメリット・デメリットを詳しく解説しました。
【メリット】
ライフステージの変化に対応しやすい
共感力や丁寧さが活きる
専門性で復職しやすい
多様な職場で活躍できる
身体的な負担が比較的少ない
【デメリット】
給与水準とキャリアアップの課題
精神的な負担(メンタルヘルス)
女性が多い職場特有の人間関係
どんな仕事にも光と影があります。大切なのは、両方を正しく理解した上で、ご自身の価値観やライフプランと照らし合わせ、納得のいくキャリアを選択することです。 言語聴覚士は、多くの女性にとって、やりがいと安定、そして働きやすさを実現できる素晴らしい専門職であることは間違いありません。
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