整形外科病院へ転職する理学療法士の求人と給料、役割、魅力
理学療法士(PT)で整形外科病院への転職を希望している人はたくさんいます。整形外科疾患の手術後のリハビリを担当できるのは整形外科病院だけだからです。また整形外科病院だとスポーツ選手のリハビリに関われる可能性も高くなりますし、手術の見学ができるメリットもあります。
ただ整形外科病院の理学療法士求人は非常に数が少なく、働く地域などの条件に一致した求人が見つかりにくい傾向にあります。さらに月収だけでなく賞与や福利厚生まで含めて給料を考えないと、年収が大きく変わってくるため注意が必要です。
整形外科病院へ転職するときには、こうしたポイントを把握しておくことが大切になります。そこで今回は「整形外科病院へ転職する理学療法士の求人と給料、役割、魅力」について解説します。
もくじ
整形外科病院の理学療法士求人と仕事内容、役割
理学療法士で整形外科というと「変形性関節症や肩関節周囲炎などの整形外科的疾患を患った患者さんに対するリハビリを実施する」というのはイメージできるはずです。ただ一言で整形外科といっても「整形外科クリニック」「整形外科病院」の2つがあります。
同じ整形外科でもクリニック(診療所)と病院では、理学療法士が任せられる役割、仕事内容が全く違います。整形外科へ転職するときには、この違いを理解しておくことが大切です。
以下に、整形外科クリニックと整形外科病院の違いについて記します。
整形外科クリニックと整形外科病院の仕事内容の違い
整形外科クリニックは外来でのリハビリがメインになります。入院している患者さんではなく、クリニックに通う患者さんのリハビリを実施するのです。例えば、以下は愛知県にある整形外科クリニックの求人になります。
求人にあるように腰痛やスポーツ障害、関節疾患、外傷など、痛みはあるけど手術を必要としない患者さんがクリニックにおける理学療法士の対象です。そのため、基本的には痛みの緩和を目的としたリハビリを実施することになります。
例えば、変形性膝関節症で膝が痛い患者さんに対して「なぜ膝が痛いのか?」を考えて、痛みを緩和するためのストレッチや筋トレなどをします。その一方で整形外科病院は手術後の患者さんが対象です。
例えば、以下は東京にある整形外科病院の求人になります。
求人に「術前機能評価、術後運動器リハビリテーション」とあるように、整形外科病院では手術をする患者さんに対するリハビリが中心になります。
例えば人工関節の手術が決まった人に対して術前の筋力を評価したり、手術で落ちた筋力回復のために筋力トレーニングをしたりします。つまり同じ変形性膝関節症の患者さんであっても、整形外科クリニックが手術を防ぐためのリハビリであり、整形外科病院は手術をした人が自宅や仕事に復帰できるように支援するためのリハビリだといえます。
このように整形外科といっても、整形外科クリニックと整形外科病院では理学療法士の仕事内容は全く違います。そのため、まずはこの違いについて理解しておきましょう。
整形外科病院はカンファレンスがある
また整形外科病院は手術を受けた患者さんが対象であるため、医者や看護師とのカンファレンスが頻繁に実施されます。
カンファレンスでは、レントゲンやMRIなどの画像を使いながら術前術後の変化を確認します。その上で「術後1週間後までは体重をかけないように」「2週間後までに膝の屈曲可動域110°を目標」「2ヶ月後までに杖を外して退院」など、ドクターと理学療法士でリハビリの注意点や目標を共有するのです。
もちろん、ドクターから理学療法士としての意見を求められることもあります。そのため、理学療法士もレントゲンなどの画像を読み取れる能力が求められます。
実際に私が実習に行った整形外科病院では、毎週水曜日の朝7時からカンファレンスが実施され、ドクターと理学療法士が意見のやり取りをしていました。クリニックでもレントゲンなどを用いてカンファレンスを行うこともありますが、毎週ではありませんし内容も整形外科病院ほど細かくしません。
こうしたカンファレンスで頻回にドクターと意見交換や情報共有をすることも、整形外科病院の理学療法士に求められる役割の一つになります。
理学療法士が整形外科病院へ転職する魅力・メリット
理学療法士には、整形外科病院へ転職したいと考えている人がたくさんいます。他では経験できない魅力やメリットが整形外科病院にはあるからです。中でも以下の3つは、整形外科病院へ転職することで得られる代表的なメリットだといえます。
- スポーツ選手のリハビリができる
- 術後急性期のリハビリが経験できる
- 手術見学ができる
以下にそれぞれについて解説します。
スポーツ選手のリハビリができる
整形外科病院では、スポーツ選手が入院して手術をする可能性もあります。特にスポーツで有名なドクターが院長であれば、スポーツ選手の割合は多くなります。当然、手術を受けたらリハビリもその病院で行いますので、理学療法士が担当することになるのです。
例えば以下は、千葉県にある整形外科病院の理学療法士求人になります。
求人に「スポーツへの復帰を望まれる患者さんが多く来院されます」とあります。こうした病院の場合、高校生や大学生などのクラブチームに所属している選手に対して、スポーツ復帰を目的とした手術が多く行われます。そのため、必然的に理学療法士がスポーツ選手を担当する数も増えるのです。
中には、そうしたつながりからチームの専属トレーナーとなる人もいます。そうなると、病院外でのスポーツ選手との関わりも持てるようになるのです。
このように脳外専門病院などとは違い、スポーツ選手と関わる機会が持ちやすいことは、整形外科病院へ転職する大きなメリットだといえます。
術後急性期の患者さんを担当できる
また手術がある整形外科病院であれば、手術後急性期の患者さんを担当することができます。
例えばクリニックであれば、手術後であっても早くて術後1ヶ月経った人のリハビリしか担当できません。その一方で整形外科病院であれば、術後1日目から担当することになるのです。
術後早期のリハビリは手術による傷や全身の状態など、手術直後だから起こる変化を考えながらリハビリを実施しなければいけません。
また手術を受けた人は「これだけ強い痛みはいつまで続くのだろうか…」「本当に良くなるのだろうか…」という、術直後に起こりやすい特有の不安を抱えています。そのため、メンタル面もサポートしなければいけないのです。
手術直後における患者さんの身体的・心理的変化は、整形外科病院でないと経験できません。こうした術直後のリハビリを経験できることも、整形外科病院へ転職するメリットの一つです。
手術の見学ができる
さらに整形外科病院で勤めていると、手術を見学することができます。担当する患者さんの手術中の様子を直で確認できるのです。これは、病院内で手術を実施する整形外科病院に勤めているからこその特権になります。
例えば以下は、整形外科病院の理学療法士求人の詳細です。
求人に「理学療法士は手術前から介入し、手術中の見学も積極的に行い」とあります。こうした病院であれば、積極的に手術見学をさせてもらうことができるのです。
手術見学をすると「大腿四頭筋をあれだけ大きく切っていたから、術後は大腿四頭筋を特に鍛えないといけない」など、手術見学で確認した内容を術後のリハビリに活かすことができます。また術中にドクターへ質問することで、手術に関してより深い知識を得ることにもつながるのです。
このように手術を見学できることは、整形外科病院へ転職する大きなメリットの一つになります。
整形外科へ転職した理学療法士の給料、年収
なお整形外科病院の給料・年収はどれくらいになるのでしょうか? 理学療法士求人の平均年収は約350万円であり、整形外科病院の給料は平均よりも少し高いと考えてください。クリニックや介護保険施設と違って手術や入院がある分、病院の売上が高いためです。
例えば以下は、埼玉県にある整形外科病院の求人です。
求人票に月収が22万円~とあります。さらに詳細を見ると、賞与(ボーナス)や福利厚生は以下のように記されています。
給料例の欄に通勤手当が上限5万円、待遇・福利厚生の欄に賞与が3.3ヶ月分、住宅手当が支給されるとあります。住宅手当は約2万円の職場が多いため2万円と仮定して、この求人の年収を計算します。
(月収22万円 + 通勤手当5万円 + 住宅手当2万円) × 12ヶ月 + (賞与22万円 × 3.3ヶ月) = 420万6000円 |
先に述べたように、理学療法士求人の平均年収が350万円であると考えるとこの求人の給料は高い方だといえます。通勤手当を上限の5万円ではなく平均的な2万円にしても、年収は400万円近くなるため好条件の求人といえます。
このように整形外科病院の理学療法士求人は、平均的な理学療法士の年収からすると給料が良い求人が見つかりやすいのです。
整形外科病院での給料は賞与と手当、福利厚生まで含めて考える
整形外科病院に転職する理学療法士の給料では注意しなければいけないことがあります。それは「月収は低いが賞与や福利厚生が高い」という募集です。つまり整形外科病院の求人を見るときには、手当や賞与まで細かく確認することが大切になります。
例えば以下は、千葉県にある整形外科病院の理学療法士求人です。
求人に月収が21万円とありますが、この月収は理学療法士の求人の中でも低い方です。先に挙げた求人もそうですが、月収だけだと整形外科病院の求人は非常に給料が低く見えます。ただ詳細を確認すると賞与や福利厚生などの手当が以下のように記されています。
通勤手当の詳細はありませんが、他の求人を参考にすると平均して2万円前後と考えることができます。加えて賞与が4.5ヶ月分とあります。賞与は3ヶ月前後の求人が大半であるため、4.5ヶ月分は非常に良い条件だといえます。この求人の年収を計算すると以下のようになります。
(月収21万円 + 2万円) × 12ヶ月 + (賞与21万円 × 4.5ヶ月) = 370万5000円 |
年収は370万円を超えるため、理学療法士の求人の平均より少し高い給料だといえます。さらに社員食堂も完備されているため、昼食代も安く済ませられることが予測できます。整形外科病院には社員食堂が完備されている職場も多いため、社員食堂の有無も必ず確認するようにしましょう。
このように、整形外科病院の求人における給料は月収だけで判断せずに賞与や手当、福利厚生まで含めて考えることが大切です。
勉強会補助の福利厚生も必ず確認
さらに、整形外科病院では勉強会受講料の補助をしてくれる職場もたくさんあります。ドクターに勉強熱心な人が多く、理学療法士の勉強を支援してくれるのです。
理学療法士の勉強会は1日で1万円以上するのが一般的です。さらに県外で泊りがけとなると、1回の勉強会に参加するのに合計で10万円近くかかることもあります。そうしたときに、半額でも病院が補助してくれれば非常に助かるのは想像できるはずです。
例えば以下は、さきほど挙げた千葉の整形外科病院の理学療法士求人になります。
詳細を確認すると「教育制度」という欄があり、勉強会受講料の補助ありと記載されています。
このように勉強会を支援してくれる整形外科病院の求人には、補助に関する記載があります。ただ基本的に補助額の細かい規定などは書いてありません。また勉強会の補助制度があるにもかかわらず、求人に記載していないところもあります。
そのため整形外科病院へ転職するときには求人への記載の有無にかかわらず、必ず転職サイトのエージェントに勉強会補助について尋ねるようにしましょう。あなたが勉強会に参加する機会が多いなら、勉強会補助も含めて年収を考えることが大切です。
整形外科病院の理学療法士求人は人気で数が少ない?
ここまで述べたように、多くのメリットがあり給料も平均より高めの整形外科病院の求人ですが、理学療法士の求人数が非常に少ないというデメリットもあります。整形外科専門の病院自体が少なく、なおかつ理学療法士に人気が高いためです。
例えば、以下はある求人サイトで「理学療法士 整形外科病院」というキーワードで検索した結果になります。
理学療法士が応募できる整形外科病院の求人は、全国で6つしかありません。その一方で「理学療法士 整形外科クリニック」で検索すると、以下のように60件近く求人が見つかるのです。
整形外科クリニックの1/10しか求人が出ていないと考えると、整形外科病院の求人数の少なさがわかるはずです。
また整形外科病院を検索するときには「整形外科」だけでなく「整形外科病院」まで入力するようにしましょう。整形外科だけで検索すると、整形外科病院だけでなく整形外科クリニック、総合病院で整形外科がある病院など、あなたが求めていない求人まで検出されます。
例えば、先に挙げた求人サイトで「整形外科 理学療法士」で検索すると、以下の結果になります。
対象求人数が333件とあるように、一気に求人数が増えます。ただ、中を確認すると整形外科病院以外の求人が大半になるのです。例えば以下は「整形外科 理学療法士」というキーワードで検索して1ページ目に表示された埼玉の求人になります。
見てわかるように整形外科専門の病院ではなく、整形外科の患者さんもいるという病院の求人です。「整形外科 理学療法士」で検索すると、こうした少しでも整形外科疾患の患者さんがいる病院の求人も出てくるため注意が必要です。
そのため整形外科病院の求人を探すときには、転職サイトの担当エージェントに、希望するのは「手術後のリハビリが経験できる整形外科専門の病院」であると伝えることが大切になります。
整形外科病院への転職を理学療法士が成功させるためには
整形外科病院へ転職すると「スポーツ選手のリハビリができる」「術後急性期のリハビリが経験できる」「手術を見学できる」というメリットがあります。しかも、給料は平均より少し高めです。
ただ整形外科病院の求人は非常に数が少なく、地域や条件などの希望に合った求人が見つかりにくいのが現状です。そのため整形外科病院への転職を考えているときは、転職サイトの担当エージェントに希望の条件を伝えて早めに求人を紹介してもらうようにしましょう。
また求人情報に関しては、賞与だけでなく社員食堂や勉強会補助の有無などの福利厚生の詳細も確認して、それらを含めた年収で考えることが大切です。
こうした情報を把握した上で整形外科病院への転職活動を行い、あなたの希望に合った求人への転職を成功させてください。
リハビリ関係者が転職を考えるとき、転職サイトを活用するとより自分の希望に沿う求人を見つけることができるようになります。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉まで行うのは現実的ではありません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や施設を含め、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって特徴が大きく異なります。例えば、電話だけの対応で素早さを重視する会社があれば、面接まで同行することで難しい案件への対応を得意としている会社もあります。他には、大手企業に強みを発揮する会社があれば、地方求人を多く保有している会社もあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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