整形外科クリニックへ作業療法士が転職する際の注意点と苦労すること

作業療法士(OT)が転職する職場の1つとして、整形外科クリニックがあります。整形外科クリニックは、外来が専門であり整形外科疾患の患者さんを主な対象としている診療所です。
整形外科クリニックに勤める作業療法士の数は、理学療法士(PT)と比較すると少ないですが、作業療法士の中でも人気が高い職場の1つです。患者さんとの関わりとして、治療的な側面が強い整形外科クリニックへ転職したいと考えている作業療法士は多いです。
ただ、作業療法士が整形外科クリニックで働くゆえに注意すべきことや、苦労することもあります。そのことを知った上で、転職先として選択することが大切です。
そこで今回は、「作業療法士が整形外科クリニックに転職する際の注意点と苦労すること」について述べます。

もくじ

作業療法士が整形外科クリニックへ転職する際の注意点

作業療法士の中でも、整形外科クリニックに転職したいと考えている人は多くいます。患者さんと治療的な側面での関わりを持てたり、スポーツ疾患の患者さんを担当できたりすることなどが、整形外科クリニックの人気が高い理由です。
ただ、整形外科クリニックへの転職を考えている場合には、そうしたメリットだけでなく注意しなければいけないこともいくつかあります。
そこで以下に、作業療法士が整形外科クリニックへ転職する際の注意点について記します。

クリニックの将来性に対する不安

作業療法士や理学療法士、言語聴覚士(ST)などのリハビリ専門職やその他の医療従事者以外の人たちには、「病院に勤めている人は職場が潰れることがないから将来も安心」と考える人が多くいます。しかし、実際にはそのようなことはありません。
確かに、国や県、市が母体となっている病院は、基本的には安定しているといえます。一方で個人経営の病院やクリニックなどは、他の企業と同様で患者さんの数が少なくなると事業を継続することができなくなります。
特にクリニックは、経営的な面だけでなく他にも心配すべきことがあります。それは、院長が退職するときにクリニックを閉鎖する可能性があるということです。
大きな病院では、医者が経営者でないところが多いです。そのため、もし院長が退職しても新しく院長を雇えば、そのまま継続して病院は運営されます。
それに対してクリニックは、院長もしくは院長の奥さんが経営者であることが多いです。そのようなクリニックでは、現在の院長や、院長の奥さんが退職する際に、クリニック自体を閉鎖する可能性があります。そうなると、雇われていた作業療法士をはじめとする医療従事者は職を失います。
そのため、整形外科のクリニックに限ったことではありませんが、転職する際は転職先の将来性を考えて職場を選択するようにしましょう。
特に作業療法士がクリニックへの転職を考えている場合は、「院長の跡取りがいるのか?」ということなどは、意識しておくようにしましょう。そうすることで、転職した職場が「院長の退職に合わせて閉鎖する」という事態を避けることができます。

作業療法業務終了時間の遅さ

作業療法士が勤める病院や介護保険施設などの多くの職場は、17時半には仕事が終わるところが大半です。その一方で整形外科クリニックの場合、17時半に業務が終了するところはほとんどありません。
整形外科クリニックの場合は、18時半まで業務がある職場がほとんどです。また職場によっては、19時もしくはそれ以降も診療を行っているところもあります。
これは、整形外科クリニックでは昼休みの時間が長いことが関係しています。作業療法士が働く一般的な病院や介護保険施設では、昼休憩は1時間程度であるところがほとんどです。それに対して整形外科クリニックでは、1時間半~2時間の休憩があります。
整形外科クリニックの場合は、診察をする医者の数がだいたい1人であるのに対して、患者さんの数がたくさんいます。そのため、どうしても患者さんの数が増えると、午前中の診療時間を過ぎてしまいます。それが2~30分なら問題ありませんが、1時間以上も越えてしまうこともあります。
そのときに昼休憩が1時間しか用意してなかったら、午後の患者さんにおける診察時間にまで影響します。そして、1人しかいない院長は休憩することも昼食をとることもできないまま、午後からの診療を行わなければいけません。
そうしたことを避けるために、整形外科クリニックでは昼休みを長く確保してあります。その結果、他の病院や施設などと比較すると、業務終了時間が遅くなってしまいます。
さらにクリニックでは、入院施設がある病院などと比較すると、患者さん1人辺りの対応時間が短くなります。具体的には、入院施設などで1人当たり1時間近くのリハビリを行うのに対して、クリニックでは1人当たり20分が一般的です。そのため、必然的に担当する患者さんの数が増えます。
そうなると、当然ながら書かなくてはいけないカルテや書類の数も多くなるため、業務後に行う仕事がたくさんあります
整形外科クリニックに限ったことではありませんが、作業療法士にはカルテの記載や計画書・報告書の作成など、業務後に行う事務作業が必ずあります。特に整形外科クリニックでは、業務外の作業時間が長くなる傾向にあります。
そのため、整形外科クリニックにおける帰宅時間は「求人情報やホームページに書かれてある業務終了時間+1時間」と考えておいた方が無難です。このように帰る時間が遅くなることも、作業療法士が整形外科クリニックに転職する際は注意すべきことだといえます。

整形外科クリニックへ転職した作業療法士が苦労しやすいこと

作業療法士が整形外科クリニックへ転職する際には、「転職先の将来性」や「帰宅時間の遅さ」などを理解した上で転職先として選択することが大切です。
また、整形外科クリニックで働くゆえに作業療法士が苦労しやすいことがいくつかあります。そうしたことも知った上で転職すると、転職後に生じるミスマッチを避けることができます。
そこで以下に、整形外科クリニックへ転職した作業療法士に起こりやすい苦労について記します。

作業療法士が担当する患者さんの数が多い

作業療法士が勤務する総合病院や整形外科病院などの入院施設では、既に述べたように1人の患者さんに対して約1時間、もしくはそれ以上の時間をかけて作業療法を行います。その一方で整形外科クリニックでは、基本的に20分でリハビリを行います。
40分を基本としている整形外科クリニックもありますが、多くの場合は20分で対応しています。つまり、1時間に約3人、1日20数人に対して作業療法を行うことになります。
そのため整形外科のクリニックでは、入院施設があるような病院と働く時間は同じであっても、担当する患者さんの数が多くなります。例えば、同じ8時間勤務であっても、患者さん1人に対して1時間かける場合は1日8人、20分であれば24人担当することになります。
さらに総合病院などの入院施設とは違って、整形外科クリニックの患者さんは通院されるため、作業療法を毎日行うことはほとんどありません。
具体的には、多い人で週3回、少ない人になると2週間に1回のペースでしか来院されない人もいます。そのため、20分という短い時間の中で、次の来院日までに行う自主訓練や注意することなどまで説明しなければいけません。
このように整形外科クリニックでは、短い時間で問診から治療、生活指導まで行う必要があります。このことは、20分でのリハビリに慣れていない人にとっては、とても苦労する点だといえます。
また、作業療法を行うためには最低でも3ヶ月に1回、「リハビリの計画書(リハビリテーション総合実施計画書)」を作成する必要があります。既に述べたように、整形外科のクリニックでは担当者数が多いため、その分カルテやこうした計画書といった書類の数も増えます。
このように整形外科クリニックでは、担当する患者数が多くなるため、「患者さんの対応」や「書類業務」に苦労する人がたくさんいます。

頻回な作業療法ができない

既に述べたように、整形外科クリニックの患者さんに対しては、多くても週に3回程度しか作業療法を行うことができません。入院施設がある病院では、ほとんど毎日患者さんと関わることができます。
ただそうはいっても、通院される患者さんであれば週に3回のリハビリは十分だといえます。しかし、これが週に1回や2週に1回だと問題となることがあります。
例えば、痛みなどの症状が軽かったり、患者さん自身で運動やケアといったような対処ができたりする人であれば、このようにリハビリの期間が空いても問題とならないこともあります。
一方で痛みが強すぎて体が動かせないような人や、高齢者のように、どうしても自分自身では症状に対して何もできない人は、できるだけ間隔を空けずにリハビリを行う必要があります
そのような場合でも、整形外科クリニックの患者さんでは、リハビリの期間が長く空いてしまうことが多いです。その結果、思うようにリハビリを進めることができないようになるケースもあります。
このように、整形外科クリニックでは、「作業療法士が思うようなペースでリハビリを行なえない」ということも、苦労することの1つとして挙げられます。
今回述べたように、作業療法士が整形外科クリニックへの転職を考えた場合、「クリニックの将来性」や「帰宅時間の遅さ」などには、十分注意した上で転職先を選択することが大切です。また、整形外科クリニックでは「患者さんの数が多いこと」や「頻回のリハビリが困難なこと」に苦労する可能性があることも知っておいてください。
作業療法士が転職先として整形外科クリニックを選択するときは、このような点を理解した上で転職するようにしましょう。


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