結論:求人票の給与は男女で分けて書かれないことが多いものの、統計では30代を中心に平均年収に差が出る傾向があります。背景には、管理職の割合やライフイベントによるブランクがあると考えられます。出産・育児の制度を知り、訪問リハビリや時短正社員などの働き方も検討すると、収入と暮らしの両立を考えやすくなります。

女性理学療法士(PT)が転職するときは、給料のほかにも、結婚・妊娠・出産といったライフイベントとの兼ね合いを考える場面が増えます。
統計を見ると、女性理学療法士の平均年収は男性より低い傾向があります。ただ、求人票の給与そのものに性別による区別があるわけではありません。差が出る背景には、管理職になる人の割合や、結婚・出産で一度現場を離れる期間の有無があると考えられます。
また、結婚後に転職するときは、転職の時期や働き方によって、産休・育休中の手当や給付金を受け取れない場合があります。一方で、ブランクがあっても、職場や働き方の選び方によっては収入を保てる場合があります。
そこで今回は「女性理学療法士(PT)の給料事情!年収を上げる転職求人を見つけるポイント」について解説します。
転職求人における女性理学療法士の給料・年収は低いか?
女性の理学療法士が転職を考えるとき、「女性は男性と比べて給料や年収が低いのでは?」と気になる方は少なくありません。世間一般に、男性のほうが給料が高いというイメージがあるためです。
しかし、理学療法士の求人票では、給与を性別で分けて記載しているものは多くありません。リハビリの業務内容は性別によって変わらず、事業所の売上も同じ基準で算定されるためです。たとえば次の画像は、東京にある脳神経外科クリニックの理学療法士求人です(2021年ごろの求人例です)。

給与の欄を見ると、給料・賞与・昇給は男女で分けて書かれていません。同じ仕事で性別によって給与に差をつけると、不合理な差別と受け取られるおそれもあるため、求人で男女別の給与を示すことは一般的ではありません。
30歳を超えると男性理学療法士の平均年収が高くなる傾向
求人票の上では同じ条件でも、統計で見ると、30代では男性理学療法士の平均年収のほうが高い傾向があります。背景のひとつは、管理職として役職手当が付く人の割合です。
女性は結婚や妊娠、出産を機に一度仕事を離れる場合があり、その間はキャリアアップの機会が限られやすくなります。一方、男性は仕事を離れるライフイベントが女性と比べて少ない分、管理職に就く時期が早まる場合があります。管理職になれば役職手当が付くため、その分だけ平均年収に差が出やすくなります。
次の表は、2019年(令和元年)の賃金構造基本統計調査で報告されている、理学療法士の男女別の給与です。調査年が古いため、現在の金額とは異なる点にご注意ください。男女差の傾向を知るための参考としてご覧ください。

出典:2019年(令和元年)賃金構造基本統計調査
表中の「きまって支給する現金給与額」が月収にあたります。25~29歳の月給は男性理学療法士が27万2,000円、女性理学療法士が26万2,000円で、1万円程度の差でした。
30~34歳では、男性の月収が29万6,000円、女性が27万5,000円となり、2万円以上の差が出ています。
この差は、30歳前後で管理職になる方が増える時期と、女性が結婚・出産で一度現場を離れやすい時期が重なることが影響していると考えられます。ブランクから復職すると管理職に就く機会が限られたり、転職で年収が下がったりする場合があります。
このように、求人票そのものに男女差はなくても、30代を中心に平均年収には差が出る傾向があります。
女性理学療法士の平均年収は?
女性理学療法士の平均年収はどれくらいでしょうか。同じく2019年の賃金構造基本統計調査をもとに、年収の目安を計算します。

出典:2019年(令和元年)賃金構造基本統計調査
女性理学療法士は、平均年齢が33歳、平均月収が27万5,000円、平均賞与額が63万5,000円です。これをもとに年収を計算すると、次のとおりです。
| (月収27万5,000円 × 12か月) + 賞与63万5,000円 = 393万5,000円 |
同じ調査で、男性理学療法士の平均年収は416万円でした。全体の平均で見ると、男女の差は約22万円(416万円と393万5,000円)です。30代では月収に2万円の差がありましたが、男女の年収差が大きくなるのは30代がピークで、その後は徐々に小さくなる傾向があります。
なお、参考として最新の統計を挙げると、厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査をもとにした集計(Benesseマナビ)では、PT・OT・ST・視能訓練士(10人以上規模の事業所、男女計)の月給が約31万1,400円、年間賞与が約70万4,700円、年収の目安は約444万円とされています。この数字は4職種・男女計のため、上の2019年の女性理学療法士の数字とは区分が異なります。単純には比べられない点にご注意ください。
このように、女性理学療法士の平均年収は男性よりやや低い傾向がありますが、大きく離れているわけではありません。年収は勤務先の種類や働き方によっても変わるため、まずは自分が望む働き方から整理してみましょう。
女性理学療法士は転職前にライフイベントを意識しておきたい
女性が転職するときは、年収だけでなく、結婚・妊娠・出産といったライフイベントも視野に入れておくことが大切です。転職の時期や働き方によっては、産休・育休中の手当を受け取れなかったり、復職したときに苦労したりする場合があります。
結婚前の方であれば、産休・育休、そして復職までを見据えた転職先選びをしておくと安心です。
産休・育休を考慮した転職を考える
妊娠・出産後は、産休や育休を取得するのが一般的です。休業中は給料が出ませんが、代わりに「出産育児一時金」「出産手当金」「育児休業給付金」などの制度があります。制度の内容は改正されることがあるため、最新の情報は協会けんぽ・厚生労働省・ハローワークなどの公式案内でご確認ください。
・出産育児一時金
出産育児一時金は、出産に伴って支給されるお金です。健康保険(国民健康保険を含む)に加入していれば、出産後に1児あたり原則50万円(令和5年4月からの引き上げ。以前は42万円)を受け取れます。産科医療補償制度に加入していない医療機関での出産などは、金額が異なる場合があります。
出産には入院費や分娩費などの費用がかかります。何も補助がなければ大きな負担になるため、費用を補う目的で一時金が支給されています。自分で保険に加入している場合も、家族の扶養に入っている場合も、対象になります(扶養の場合は「家族出産育児一時金」として支給されます)。
・出産手当金
出産手当金は、出産に伴う産休中に支給される手当です。出産予定日の6週間前(双子など多胎妊娠の場合は14週間前)から産休を取得でき、産後8週間は原則として女性を就業させてはならないと定められています(労働基準法第65条。一定の条件で産後6週間経過後に就業できる例外があります)。この期間は給料が支給されないため、その分を補うのが出産手当金です。
出産手当金は、勤務先の健康保険に加入している本人(被保険者)が対象です。パートやアルバイトでも、健康保険に加入していれば対象になります。ご自身が被保険者本人か、被扶養者か、国民健康保険かは、加入している健康保険の資格確認書や資格情報のお知らせ、勤務先の担当窓口で確認できます。下の画像は従来の保険証の例です(現在は新規発行が終了し、マイナ保険証や資格確認書が使われています)。

一方、家族の扶養に入っている場合や、国民健康保険の場合は、出産手当金は支給されません。支給額の目安は、「支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日(標準報酬日額)× 3分の2 × 産休の日数」で計算されます。
・育児休業給付金
産後8週間以降も育児休業として仕事を休む場合は、育児休業給付金が支給されます。対象は雇用保険の加入者で、受け取るには「育児休業開始前の2年間に、賃金支払の基礎となった日数が11日以上ある月(11日未満の場合は就業した時間が80時間以上の月)が12か月以上あること」などの条件があります。
たとえば、結婚して週2日程度のパート勤務をしていた場合は、勤務日数や時間によっては条件を満たさず支給されないことがあります。2年以上専業主婦で、妊娠前の勤務期間が1年未満の場合も同様です。自営業などで雇用保険に入っていない場合や、育休を取得しない場合、育休後に退職する予定の場合も、対象外となります。
支給額の目安は次のとおりです(休業開始時賃金日額をもとにした計算で、上限額があります)。
- 育休開始から180日まで:賃金の67%
- 育休開始から181日目以降:賃金の50%
さらに、2025年4月からは「出生後休業支援給付金」が新設されました。両親がともに育児休業を取得するなど一定の条件を満たすと、最大28日間、休業開始時賃金日額の13%が上乗せされます。対象となる条件は細かく決められているため、利用を考えるときは勤務先やハローワークで確認してください。
このように、出産手当金や育児休業給付金は、勤務期間・勤務日数・保険の加入状況によって受け取れない場合があります。結婚後に転職するときは、妊娠・出産・産後の暮らしも見据えて、働き方と転職時期を考えるようにしましょう。
理学療法士の強みを活かして女性が収入を高める方法
女性理学療法士は、妊娠・出産でキャリアが一時的に止まることで、年齢を重ねるにつれて平均年収に差が出やすくなります。ただ、働き方次第では、ブランクがあっても収入を高められる職場に転職することは可能です。
まず、病院やクリニックの正社員は、役職がなければ収入が平均的な水準にとどまる場合があり、収入を大きく上げるには管理職を目指す方法があります。たとえば次の画像は、兵庫県にあるクリニックの理学療法士求人です(2021年ごろの求人例です)。

この求人の年収は344万円で、一般職の求人例のひとつです。求人票の給与は性別で分けられていないため、この水準で十分という方は、ブランクの有無や性別を過度に気にせず探せる場合があります。
一方、管理職の求人は次のように高めの年収が示されることがあります。

管理職の求人では、年収500万円以上が示される場合もあります(2021年ごろの求人例です)。ただし、管理職募集は、管理職経験があり、長く続けて働ける方を求めている場合があります。ブランクがある方や、これから結婚・出産の予定がある方は、条件に合わないこともあるため、あらかじめ求人票で応募条件を確認しておきましょう。
収入を高めたいなら訪問リハビリも選択肢
理学療法士の求人のなかには、管理職でなくても比較的高めの給与を提示している職場があります。そのひとつが訪問リハビリです。給与の水準は事業所によって異なりますが、条件のよい求人が見つかる場合があります。
たとえば次の画像は、東京にある訪問リハビリの理学療法士求人です(2021年ごろの求人例です)。

この求人では、年収465万円からとされています。本記事で紹介した平均年収と比べても、高めの例といえます。このように、役職に就かなくても給与の高い求人が見つかる場合があるため、ライフイベントでブランクがあっても選択肢になります。ただし、訪問リハビリは1人で訪問する場面が多い、移動が必要になるなど、働き方の特徴も異なります。求人票や見学で、業務内容とあわせて確認しましょう。
女性理学療法士には時短正社員もおすすめ
育休後に「収入は確保したいけれど、正社員ほど長い時間は働きたくない」という場合は、パートではなく時短正社員という働き方も選択肢になります。時短正社員とは、1日6時間など勤務時間は短くても、正社員として扱われる働き方です。
パートの場合は勤務時間を調整しやすい反面、事業所によっては社会保険や賞与などの福利厚生を受けられない場合があります。時短正社員であれば、福利厚生を受けながら早く帰れる場合があります。たとえば次の画像は、訪問リハビリ事業所の時短正社員募集の理学療法士求人です(2021年ごろの求人例です)。

この求人では、週30時間以上の勤務で常勤(正社員)として扱われ、月給30万円が保証されると記載されています。週5日出勤なら、1日の勤務時間は「週30時間 ÷ 5日 = 6時間」です。正社員として福利厚生を受けながら1日6時間の勤務であれば、子育て中の負担を抑えやすくなります。
もちろん、収入を増やしたいときは、勤務を増やして対応することも可能な場合があります。時短正社員の制度や条件は事業所によって異なるため、応募前に求人票や面談で確認してください。
よくある質問
Q. 女性理学療法士は、男性より給料が低いのですか?
A. 求人票の給与そのものを性別で分けている例は多くありません。ただし、統計では30代を中心に女性の平均年収が低い傾向があります。背景には、管理職の割合や、結婚・出産によるブランクがあると考えられます。
Q. 結婚前に転職したほうがよいですか?
A. 出産手当金や育児休業給付金は、保険の加入状況や勤務期間などの条件があります。出産を考えている方は、転職の時期によって受け取れない場合があるため、先に条件を確認しておくと安心です。
Q. ブランクがあっても収入を保てる働き方はありますか?
A. 訪問リハビリや時短正社員など、選択肢になる働き方があります。給与や条件は事業所によって異なるため、求人票や見学で確認しましょう。
Q. 出産育児一時金はいくらもらえますか?
A. 令和5年4月からの引き上げで、1児あたり原則50万円です(以前は42万円)。条件によって金額が異なる場合があるため、加入している健康保険の案内で確認してください。
女性理学療法士が転職で失敗しないためには
ここまで見てきたとおり、女性理学療法士の平均年収は、統計では男性よりやや低い傾向があります。妊娠・出産というライフイベントの影響で、管理職になる方の割合が異なることなどが背景にあります。
転職では、給料だけでなくライフイベントも合わせて考えることが大切です。産後の働き方によって、転職のタイミングや勤務時間・日数が、産休・育休の制度の対象になるかどうかに影響することがあります。産後に専業主婦になるのか、復職するのかを含めて、結婚後の働き方を考えておきましょう。
また、結婚や出産を挟んでも、収入を保つ道が見つかる場合があります。役職に就かなくても給与の高い求人が見つかる訪問リハビリや、育児の時間を確保しながら正社員として働ける時短正社員は、検討する価値のある選択肢です。
給料だけでなく、ご自身の暮らしに合った働き方をしっかり考えて、納得のいく転職につなげましょう。
