理学療法士転職求人の給料は安すぎる?平均年収・給与相場を解説

理学療法士(PT)の中には、給料・年収が低すぎると悩んでいる人は多いです。確かに、理学療法士の給料は生活に余裕が出るほど高くはありません。実際、理学療法士は他業界と比べ平均年収が低いです。

理学療法士の平均年齢は33歳であり、平均年収は409万円になります。その一方で30代前半における給与所得者(全産業)の平均年収は454万5,000円万円です。理学療法士は一般的な給与所得者よりも平均年収50万円近くも安いのです。

また給料について考えるときには、月収や年収だけでなく手取り額を把握しておくことも大切になります。実際に生活で使えるのは手取り額であるためです。

こうした給料事情を把握した上でどういった職場が高収入であるかを知っておくと、転職時に役立ちます。そこで今回は「理学療法士求人の平均年収・給料相場」について解説します。

もくじ

理学療法士求人の平均年収、給料・手取り相場

理学療法士として転職する際に、給料や年収の相場を知っておくことは大切です。転職を考えている求人先の給料が良いのか悪いのかを、判断できるようになるためです。また月収や年収だけでなく、実際の手取り相場までを考えて転職先を選ぶことが重要になります。

以下に、理学療法士の月収や年収、手取り相場について解説します。

理学療法士求人の平均月収・年収と賞与(ボーナス)

厚生労働省が発表している賃金構造基本統計調査の職種別賃金額を元に、理学療法士の給料相場を考えます。2019年の調査結果では理学療法士は月収28万7,000円、賞与その他特別給与額が64万6,000円と報告されています。

出典:2019年賃金構造基本統計調査

ここから、理学療法士の平均年収は「月収28万7,000円 × 12ヶ月 + 賞与その他特別給与額64万6,000円 = 409万」と算出できます。ただ理学療法士の平均年齢は33歳であり、平均年収には当然ながら40代や50代で管理職である高収入理学療法士の年収も含まれています。

そのため実際に募集されている理学療法士求人はもっと低く、年収は300万円台であることが大半です。例えば以下は、東京にある整形外科クリニックの理学療法士求人になります。

求人に年収が300~400万円前後とありますが、これについて、年収300万円の求人と考えるのが妥当です。

このように理学療法士の平均年収は400万円を超えているものの、実際の求人で募集されている年収は300万円台が一般的になります。そのため、理学療法士求人の年収は350万円前後が平均と考えておきましょう。

給料の手取り額はいくらになるか?

また給料について考えるとき、年収だけではなく手取り額を知っておくことが大切になります。給料からは年金や健康保険などの社会保険料、所得税・住民税として税金が天引きされるためです。実際に生活で使えるお金は、年収ではなく社会保険と税金を引いた手取り額になります。

例えば理学療法士の平均年収である409万円であれば、手取り額と社会保険料、税金の内訳は以下になります。

手取り額 約322万円(月27万円)
社会保険料 57.9万円
住民税 18.3万円
所得税 8.8万円

年収が409万円であっても社会保険料で約60万円、税金で約27万円支払わなければいけないため、実際の手取り額は年で約322万円になるのです。ちなみに実際の理学療法士求人の平均である年収350万円だと、内訳は以下のようになります。

手取り額 279万円(月23万円)
社会保険料 49.8万円
住民税 14.7万円
所得税 6.96万円

このように理学療法士の年収を考えるときには、社会保険料や税金も含めた手取り額で考えることが大切になります。

手取り額から考える理学療法士求人の年収、月収

転職を考えて求人を探すときには、手取り額で給料を判断しなければいけません。先に述べたように、生活で使えるのは手取り額であるためです。

理学療法士における月の手取り額として、手取り額20万円、25万円、30万円は一つの基準になります。月の手取り額が20万円は最低欲しいという人が大半であり、手取り25万円以上であれば比較的良い求人、手取り30万円以上であれば高収入と考えられます。

そこで以下に、求人を提示しながらそれぞれの手取り額を達成するために必要な年収、月収額を記します。

・手取り額が20万円以上の理学療法士求人

手取り額が20万円の場合、年収300万円(月収25万円)になります。もちろん手取り額は扶養家族によって変わってくるため多少の変動がありますが、おおよそこれくらいだと考えてください。

例えば以下は、東京にあるクリニックの理学療法士求人です。

年収が300万円であるため、月の手取り額は約20万円になります。

ただ注意しなければいけないのは賞与の有無です。年収300万円でも、賞与も含めた年収であれば月収は下がります。例えば年収300万円で賞与が年60万円であれば、月給は「(年収300万円 - 賞与60万円) ÷ 12ヶ月 = 月収20万円」となります。

そうなると、年収の手取り額は同じであっても月給の手取り額は低くなるのです。そのため手取り額を考えるときは、年収と月給、賞与をトータルして考えるようにしましょう。

・手取り額が25万円以上の理学療法士求人

月の手取り額が25万円を目指す場合、年収369万円(月収33万円)を目安にしましょう。例えば以下は、埼玉にある有料老人ホームの理学療法士求人です。

求人に年収が360万円~450万円とあるため、手取り額はおおよそ25万円になると考えられます。年収が360万円を超えていれば、月の手取りは25万円前後になります。

もちろんこの求人でも、賞与の有無によって月の手取り額は変わってきます。そのため、必ず事前に賞与の扱いについて尋ねておくようにしましょう。

・手取り額が30万円以上の理学療法士求人

月の手取り額が30万円以上を目指す場合、年収456万円(月収38万円)以上の求人を探さなければいけません。これは理学療法士求人の中でも非常に高額求人だといえます。例えば以下は、東京にある訪問リハビリの理学療法士求人です。

年収が465万円~600万円とあるため、月の手取り額は30万円を超えると考えられます。ただ月給は33.7万円~となっています。先に述べたように、月の手取り額30万円を超すためには月収が約38万円必要になります。こうした求人は、年収に賞与が含まれて計算されているのです。

具体的には、月給が33.7万円であると年収は「33万7,000円 × 12ヶ月 = 404万4,000円」になります。求人に提示された年収額465万円と404万4,000円の差額である60万6,000円が賞与として支給されるのです。

このように手取り額を考えるときには、おおよその年収額を把握した上で賞与の有無を確認することが重要になります。

経験年数別における理学療法士の給料・年収は?

また当然ですが、理学療法士も経験年数によって給料や年収は変わってきます。特に、1年目と2年目、3年目では年収が変わってきますし、5年目になると役職がついて役職手当により給料が一気に上がる理学療法士もいます。

そこで以下に、1年目と2、3年目、5年目の理学療法士の給料・年収について解説します。

1年目理学療法士の給料は?

1年目の理学療法士の給料は、先ほど挙げた2019年の賃金構造基本統計調査から算出できます。以下は、理学療法士の年齢別における賃金の平均値を示した表です。

出典:2019年賃金構造基本統計調査

表中の「きまって支給する現金給与額」は月収、「年間賞与その他特別給与額」は賞与(ボーナス)になります。20~24歳の欄を確認すると勤続年数が1.4年であり賞与が極端に少ないため、1年目の給料を反映していると考えられます。1年目は賞与が1回しかないケースが多いためです。

そうなると、理学療法士1年目の年収は以下のように算出できます。

月収24万2,000円 × 12ヶ月 + 賞与28万8,000円 = 319万2,000円

1年目の理学療法士は賞与が少ない分、年収も低くなると考えてください。

2年目、3年目理学療法士の給料は?

2年目、3年目になると賞与の額が上がるため、年収も高くなります。ただ、2年目、3年目では年収はほとんど変わりません。理学療法士の昇給は1年で月に1,000~3,000円であるため、1年で大きく年収が上がることはないのです。

先ほどと同じ、2019年賃金構造基本統計調査を元に算出します。

出典:2019年賃金構造基本統計調査

20~24歳の欄の勤続年数は1.4年、25~29歳の欄の勤続年数が3.8年となっています。この2つの勤続年数を足して2で割ると、「(勤続年数1.4年 + 勤続年数3.8年) ÷ 2 = 2.6年」となり、2年~3年目の年収になると考えられます。

賞与に関しては、2年目以降は2回支給されるため、25~29歳の欄の賞与額を用いて年収を計算します。そうすると、2年目、3年目の年収は以下のようになります。

(月収24万2,000円 + 月収27万2,000円) ÷ 2 ×12ヶ月 + 賞与61万4,000円 = 369万8,000円

このように2年目、3年目の理学療法士になると賞与額が上がる(2回支給される)ため、年収も一気に高くなるのです。

5年目理学療法士の給料・年収は?

それでは5年目になると理学療法士の年収はどうなるのでしょうか? 結論から述べると、5年目を超えると平均年収は上がります。管理職となって管理職手当を支給される理学療法士が増えるためです。

また同じように、2019年賃金構造基本統計調査を元に算出します。

出典:2019年賃金構造基本統計調査

25~29歳、30~34歳の欄を確認すると、それぞれの勤続年数は3.8年と6.2年となっています。そのため、これら2つの年代の中間が約5年目理学療法士の年収と考えることができます。5年目理学療法士の年収は以下のように算出されます。

「(月収27万2,000円 + 月収29万6,000円)× 12ヶ月 + (賞与61万4,000円 + 67万3,000円)」 ÷  2 = 405万1,500円

このように、理学療法士としての経験が5年を超えてくると平均の年収が400万円を超えてくるのです。

理学療法士の本音「給料が安すぎる」は正しいか?

理学療法士の中には「理学療法士は給料が安すぎる」と本音をこぼしている人が多いです。しかし、本当に理学療法士の給料は安すぎるのでしょうか?

厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、給与所得者全体(全産業)の平均年収は432万2,000円となっています。先に述べたように理学療法士の平均年収が409万円なので、比べると確かに安いです。

2019年賃金構造基本統計調査で、給与所得者全体(全産業)の年齢別の平均年収は以下のように報告されています。

出典:2019年賃金構造基本統計調査

30~34歳を確認すると「月収が31万3,000円、賞与その他特別給与額が84万7,000円」とあります。これから年収を計算すると、以下のようになります。

月収31万3,000円 × 12ヶ月 + 賞与その他特別給与額84万7,000円 = 460万3,000円

これと比較すると、平均年齢が33歳で平均年収が409万円である理学療法士の給料は安いといえます。一般的に認識されているように、理学療法士の平均年収は低いのです。

理学療法士は昇給が少ない

理学療法士の年収が低い大きな理由に、昇給の少なさが挙げられます。理学療法士1年目の初任給は一般的な大卒者と比較して違いはありません。ただ昇給が少ないため、経験年数を重ねるごとに他業種との差が開いていくのです。

例えば、以下は2019年賃金構造基本統計調査にある産業別初任給の違いを示した表になります。

出典:2019年賃金構造基本統計調査

初任給の額は、全体平均が21万円、医療・福祉が20万6,000円と4,000円しか違いはありません。ただこれが30代になると、先ほど挙げた年齢別の表で記したように差が出てくるのです。

以下に再度、理学療法士(平均年齢33歳)と30~34歳の給与所得者全体の平均月収と賞与その他特別給与額の表を載せます。

出典:2019年賃金構造基本統計調査

30~34歳の理学療法士の平均月収額が28万5,000円(男女平均)、30~34歳の給与所得者全体(全産業)の平均月収額が31万3,000円となっています。またそれに伴って、賞与額にも22万円近い差(84万7,000円 - 62万1,000円 = 22万6,000円)が出ています。

初任給では4,000円の違いだった月収が、30代になると2万8,000円も差がついているのです。つまり、理学療法士は昇給が少ないといえます。

実際に私が最初に勤めた職場は1年の昇給額は月1,000円でした。2つ目の職場も月1,500円の昇給であり、業績が良くない年は昇給なしということもありました。

このように昇給額が少ないことも、理学療法士の給料が安い原因になります。

訪問リハビリと老人ホームの転職求人は年収が高い

しかし同じ理学療法士の求人でも、転職先によって給料は大きく異なります。それぞれで事業規模や理学療法士の必要度合いが違うためです。中でも、理学療法士の給料が高い傾向にあるのは「訪問リハビリ」「老人ホーム」の2つになります。

例えば以下は、東京にある訪問リハビリの理学療法士求人です。

求人にあるように、年収が520万円~850万円となっています。訪問リハビリは理学療法士がリハビリして請求できる報酬額が高いため、高収入である職場が多い傾向にあります。

・特別養護老人ホーム(特養)も年収が高い

また以下は静岡県にある特別養護老人ホーム(特養)の理学療法士求人です。

求人にあるように月給が22万円、通勤手当が5万円、賞与が初年度4ヶ月分とあります。住宅手当に関しては詳細がありませんが、2万円前後の施設が多いため2万円と設定して計算します。以下がこの求人の年収になります。

(月収22万円 + 通勤手当5万円 + 住宅手当2万円)× 12ヶ月 + (月収22万円 × 賞与4ヶ月) = 436万円

先の訪問リハビリの求人と比較すると高くありませんが、年収400万円を超える高収入の求人だといえます。特養は複数事業を経営している規模が大きな法人が運営していることが多いため、給料も高めに設定されているのです。

このように理学療法士の求人の中でも、訪問リハビリと特養は給料が高い傾向にあることを知っておきましょう。

総合病院、回復期病棟の転職求人は給料が安い

その一方で、理学療法士求人の中でも「総合病院」「回復期病棟」の2つは給料が安い傾向にあります。どちらも規模は大きい病院ですが、理学療法士の人数が多く離職者も少ないため需要がないのです。

例えば以下は、愛知県にある総合病院の理学療法士求人になります。

求人にあるように年収は320万円です。理学療法士求人の平均が約350万円であるため、やや年収が低めの求人といえるでしょう。

さらに以下は、愛知県にある回復期病院の理学療法士求人です。

この求人にいたってはさらに年収が低く、264万円と提示されています。

もちろん、総合病院や回復期病院でも年収が350万円を超えている求人はあります。ただ全体的に総合病院と回復期病院の理学療法士求人は、年収が低い傾向にあることを知っておきましょう。

ちなみにクリニックや急性期病院は職場によって給料のバラつきが大きく、転職先選びによって年収が大きく変わってきます。

理学療法士の給料相場を知り、転職へ活かす

理学療法士求人の給料相場は年収350万円になります。ただ実際に生活で使えるのは求人に提示されている額でなく手取り額であり、年収350万円の手取り額は279万円(月23万円)です。給料について考えるときには、手取り額について考えることが大切です。

また理学療法士の初任給は他業界と同じくらいであるものの、昇給が少なく経験を重ねても年収が上がりにくいというのが実際です。これが、理学療法士の給料が安いと考えられている理由になります。

ただ同じ理学療法士であっても、訪問リハビリや特別養護老人ホームは給料が高く、総合病院や回復期病院は給料が低い傾向にあります。転職するときに給料が高い職場を選べば、他業界の平均よりも良い給料をもらうことは可能性です。

こうした理学療法士の給料における現状を把握した上で、働き方や職場について考えるようにしましょう。


リハビリ転職で失敗しないために必要な理想の求人・転職先の探し方とは!


リハビリ関係者が転職を考えるとき、転職サイトを活用するとより自分の希望に沿う求人を見つけることができるようになります。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉まで行うのは現実的ではありません。

一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や施設を含め、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。

ただ、転職サイトによって特徴が大きく異なります。例えば、電話だけの対応で素早さを重視する会社があれば、面接まで同行することで難しい案件への対応を得意としている会社もあります。他には、大手企業に強みを発揮する会社があれば、地方求人を多く保有している会社もあります。

これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。

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