理学療法士が大学病院の求人へ転職するメリットとデメリット
理学療法士(PT)が転職する一つの選択肢として大学病院があります。数は限られていますが大学病院で働いている理学療法士もいます。
大学病院へ転職すると一般病院では経験できない疾患の患者さんのリハビリを担当できたり、研究や学会発表をしやすくなったりするというメリットがあります。また他の転職先と比べて給料が良い(高収入)ことも、大学病院の特徴の一つです。
ただ、大学病院は研究や学会発表で時間を追われて忙しかったり、求人自体が見つかりにくかったりといったデメリットもあります。大学病院への転職を考えているなら、メリットとデメリットの両方を把握した上で検討することが大切です。
そこで今回は「理学療法士が大学病院の求人へ転職するメリットとデメリット」について解説します。
もくじ
理学療法士が大学病院へ転職するメリット
理学療法士として大学病院へ転職すれば、他の職場にはないさまざまなメリットを得ることができます。特に以下の4つは、大学病院ならではのメリットだといえます。
- 幅広い症例を経験できる
- 働き方の幅が広がる
- 研究設備が充実している
- 待遇が良い
以下にそれぞれについて解説します。
大学病院へ転職すると幅広い症例を経験できる
理学療法士が大学病院へ転職する一番のメリットは、経験できる症例の幅にあります。大学病院は救命救急医療や先端医療といった最先端の医療が揃っています。また多くの診療科が存在しているため、さまざまな疾患の患者さんが来院・入院します。
そのため、理学療法士も他の病院では担当できないような難病などの珍しい症例を幅広く経験することができるのです。例えば以下は、信州大学付属病院の求人になります。
求人にもあるように大学病院の疾患は多様であり、一つの分野の患者さんだけでなく、さまざまな疾患の患者さんを経験できます。
例えば大学病院であれば、整形外科的疾患の患者さんはもちろんのこと、ALS(筋委縮性側索硬化症)などの、一般の病院では担当できない難病の患者さんに対してリハビリを行うことができます。
その一方で整形外科のクリニックであれば、担当する患者さんのほとんどは変形性膝関節症などの整形外科的疾患を患った人になります。
整形外科疾患などの特定分野の患者さんだけでなく、難病も含めた広範囲な分野の患者さんのリハビリを経験できるのは他の病院にはない大学病院のメリットです。
幅広い分野の症例を担当した経験があれば、理学療法士としての視野が広がります。例えば、脳梗塞の患者さんのときに考えたリハビリ方法を整形外科疾患の患者さんへ応用することで問題解決につながることもあります。
このようにさまざまな疾患の患者さんを担当できることは、理学療法士として大学病院へ転職する大きなメリットの一つだといえます。
理学療法士として働き方の幅が広がる
大学病院での勤務経験があると、働き方の幅が広がります。大学病院でさまざまな症例を担当して経験しておけば、どのような職場への転職にも気後れしないためです。
例えば整形外科病院での勤務経験しかないと、転職先として整形外科クリニックや整形外科病院などに絞って職場を探しがちになります。自分の経験を活かした職場への転職を第一に考えるためです。そうなると選択肢の幅が狭まって、待遇面など「勤務条件希望と合う求人」が見つかる可能性は低くなります。
その一方で大学病院で働いて整形疾患から中枢疾患、難病までを幅広く経験していると、特定の分野にこだわらずに転職先を選べるようになるのです。
また大学病院では、基本的に研究をして学会で発表します。学会発表の経験があると転職時のアピールポイントにもつながり、キャリアアップ転職を成功させやすくなるのです。
このように多くの症例を経験できたり学会発表を経験できたりすることで、働き方の幅が広がるということも大学病院へ転職するメリットといえます。
一般病院より大学病院は研究設備が充実している
大学病院における特徴の一つに「大学病院は研究機関である」ということが挙げられます。大学病院では、さまざまな病気や治療に関する研究を行っています。そのため、一般の病院と比較すると研究のために必要な設備が充実しています。
例えば、整形外科疾患の手術後には筋力を回復させなければいけません。手術別による筋力の回復具合の違いを研究するために、筋力を計る機械を置いている大学病院は多いです。一般病院にも研究に使える機械はありますが、大学病院の方が圧倒的に高性能の機械が置いてあります。
例えば以下の広島大学の求人にあるように、研究補助が理学療法士における業務の一部となっている病院もあります。
当然、大学病院にある研究設備は理学療法士も使用できます。こうした研究設備を利用して研究を行い、論文として発表することができるのです。
一般的なクリニックや病院には、大学病院ほど研究設備がありません。そのため、実施できる研究内容も限られてくるのが現状です。そうした中で大学病院であれば設備が充実しているため、さまざまな研究を実施して学会で発表できるようになるのです。
このように、研究に興味があるなら大学病院は非常に魅力的な転職先だといえます。
大学病院は福利厚生、賞与が充実している
理学療法士が大学病院へ転職した場合、一般的な病院と比較すると待遇が優れている傾向にあります。月収は他の病院と同じくらいの額ですが、福利厚生や賞与(ボーナス)などが充実している職場が多いです。例えば以下は、帝京大学医学部付属病院の理学療法士求人になります。
求人内の勤務条件の賞与、諸手当を確認すると、賞与が4.45ヶ月分、通勤手当が上限5万5,000円、住宅手当が2万7,000円とあります。
理学療法士の一般的な求人であれば、賞与は3ヶ月分、通勤手当は2万円、住宅手当は2万円である求人が大半です。それと比較すると、大学病院の待遇が良いことがわかります。
他にも大学病院では、院外の講習会参加などに関して講習会参加費や交通費、宿泊費といった費用を負担してくれるところも多いです。講習会代、交通宿泊費を合わせると1回で10万円を超す場合もたくさんあるため、こうした補助があることは非常に助かります。
このように理学療法士が大学病院へ転職すると、賞与や福利厚生などで高待遇を受けることができる可能性が高いです。
理学療法士が大学病院へ転職するデメリット
ここまで述べたように、大学病院へ転職すると多くのメリットが得られます。ただ大学病院への転職はメリットばかりではありません。大学病院へ転職することで被るデメリットもあるのです。特に以下の2つは、大学病院へ転職する理学療法士が感じやすいデメリットだといえます。
- 学会は発表が強制されて忙しい
- 求人が見つかりにくい
以下、それぞれについて解説します。
学会発表が強制されて忙しい
先に述べたように大学病院は病院でありながらも研究機関であり、それが大学病院で働くメリットの一つでもあります。ただ研究に興味がない理学療法士にとっては、研究と学会発表をしなければいけないことはデメリットになります。
学会発表をするためには、研究をしなければいけません。研究は業務外で行うことになるため、研究を始めると昼休みや業務後の時間も研究に費やすことになります。また研究が終わると、学会発表に向けて資料作成やプレゼンの練習をします。
学会が終わるまでは、研究と学会発表の準備で昼休みも休めませんし帰宅も遅くなるのです。
また研究に関しては実験方法はもちろんのこと、結果の統計方法についても勉強が必要になります。
そのため研究を始めると実験や勉強、統計、資料作り、プレゼン練習と、とにかく毎日が忙しく余裕がなくなります。大学病院で研究をしている理学療法士には、日々の睡眠時間を削って研究に励んでいる人もたくさんいます。
もちろん、研究や学会発表をしたいのであれば大学病院は魅力的な転職先だといえます。ただ研究や学会発表に興味がないのであれば、大学病院は非常に忙しくプライベートの時間が十分に取りにくいと感じるはずです。
このように人によってはメリットである研究や学会発表も、人によってはデメリットと感じることもあります。
求人が見つかりにくい
また大学病院の求人は非常に見つかりにくいです。大学病院自体の数が限られていますし、大学病院で勤める人には転職する人が少ないので欠員も出にくく求人として募集されないのです。
例えば、ある求人サイトで「大学病院」というキーワードで検索すると、以下のような結果になります。
大学病院で検索しても、公開求人数が0件、非公開求人数が1件となっています。非公開求人が1件あっても、求人情報はほぼないといえます。
大学病院の求人は常時募集しているわけではないため、タイミングが良くなければ見つかりません。そのため大学病院への転職を考えているなら、数ヶ月ではなく1~2年単位で転職活動を行って求人を見つける必要があるのです。
大学病院における理学療法士の募集・採用方法
大学病院は一般的な病院の求人とは募集方法が異なります。理学療法士の求人というと、求人サイトや転職サイトに採用条件などを掲載して募集するのが基本です。ただ大学病院は基本的に求人サイトや転職サイトは使用せずに、病院の公式HP(ホームページ)で求人の募集を行います。これも大学病院の理学療法士求人が見つかりにくい理由の一つになります。
例えば以下は、栃木県にある国際医療福祉大学病院の理学療法士を募集している求人です。
これは求人サイトや転職サイトではなく、国際医療福祉大学病院の公式HPに掲載されていたものです。採用方法は一般的な病院と変わらず、書類選考(履歴書)と面接の2段階の採用方式になります。
このように大学病院における募集は基本的に病院公式のHP内で行うため、求人サイトや転職サイトを頼っても求人情報は見つからないのが現状です。そのため大学病院の理学療法士求人を探すときには、求人サイトや転職サイトに頼らずに自分で探さなければいけないのです。
大学病院における理学療法士求人の給料・年収
なお大学病院の理学療法士求人における給料や年収はどれくらいでしょうか? 大学病院における理学療法士の給料は平均よりも高めだと考えてください。先ほど大学病院のメリットとして「福利厚生での待遇が良い」と述べましたが、ここで大学病院における実際の年収を算出します。
例えば先ほど挙げた、帝京大学医学部付属病院の理学療法士求人の年収を算出します。
求人には月収が21万円、通勤手当が5万5,000円、住宅手当が2万7,000円、賞与(ボーナス)が4.45ヶ月分とあります。この求人の年収を計算すると、以下のようになります。
(月収21万円 + 通勤手当5.5万円 + 住宅手当2.7万円) + (月収21万円 × 賞与4.45ヶ月分) = 443万8500円 |
このように、年収が400万円を軽く超えます。理学療法士の求人で年収が400万円以上の求人はほぼないため、大学病院の給料は非常に高額だといえます。
大学病院の理学療法士求人の見つけ方
ここまで述べたように大学病院は仕事内容も給料面もどちらもメリットが多い一方で、研究や学会に興味がない人にとっては「仕事が忙しく大変」というデメリットがあります。また何よりも、求人が見つかりにくいというのが一番の問題です。
もし「幅広い症例を経験したいし、忙しくてもいいから研究と学会発表もしたい」というのであれば、大学病院の求人を頑張って探すのも良いでしょう。その場合、大学病院の公式HPにしか求人や採用情報は載らないため、目的となる大学病院の公式HPを定期的にチェックすると良いです。
ただ大学病院にこだわりがないのであれば、他の転職先を検討することも頭に入れておきましょう。
例えば、高収入が目的であれば歩合制の訪問リハビリや老人ホームがありますし、幅広い症例を経験したいなら診療科が多い総合病院という選択肢もあります。また働きながら研究したいのであれば、大学院に通うという方法も可能です。
大学病院へ転職を考えるときには、目的を明確にすることが大切です。その上で「本当に大学病院でないといけないのか?」「もっと他に希望に合った転職先はないのか?」を考えることで、あなたに合った理想の転職先が見つかるようになります。
今回の記事を参考に大学病院のメリット・デメリットを把握し、理想の職場への転職を成功させるようにしましょう。
リハビリ関係者が転職を考えるとき、転職サイトを活用するとより自分の希望に沿う求人を見つけることができるようになります。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉まで行うのは現実的ではありません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や施設を含め、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって特徴が大きく異なります。例えば、電話だけの対応で素早さを重視する会社があれば、面接まで同行することで難しい案件への対応を得意としている会社もあります。他には、大手企業に強みを発揮する会社があれば、地方求人を多く保有している会社もあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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