理学療法士の離職率は高い?離職理由を知り、転職を成功させるポイント
理学療法士(PT)であれば、理学療法士の離職率について気になるのではないでしょうか? 一般的に、医療や介護業界の離職率は高いといわれています。実際に、医療・介護業界は他業界と比較すると離職率が高い傾向にあります。
ただ、だからといって医療・介護業界はブラックなのかというと、そうではありません。ポジティブな理由で転職する人も多いためです。
特に理学療法士には、スキルアップ目的で転職をする人がたくさんいます。離職率について考えるときには、こうした内情を把握しておくことも重要です。
また離職して転職するときには、離職理由を明確にしてそれを解消できる転職先を選ぶことが大切になります。深く考えずに転職先を決めると、また同じ問題で悩まされる可能性が高いからです。このとき失敗しないためには、転職先選びのポイントを押さえておかなければいけません。
そこで今回は「理学療法士(PT)における離職の現状を知り、転職を成功させるポイント」について解説します。
もくじ
理学療法士における平均勤続年数と離職率
離職率を考えるときに、平均勤続年数を知ることは大切になります。離職率より勤続年数の方がイメージしやすいためです。
例えば、「うちの職場は離職率10%以下です」と言われて、その職場の離職に関してイメージできるでしょうか? それよりも「理学療法士の平均勤続年数は5年です」の方が、わかりやすいはずです。
理学療法士の平均勤続年数は、2019年賃金構造基本統計調査によって以下のように報告されています。
出典:2019年賃金構造基本統計調査
男性理学療法士は平均勤続6.1年、女性理学療法士は平均勤続が6.3年となっています。つまり、理学療法士の平均勤続年数は「6.2年」です。
女性と比較して男性の勤続年数が少ない理由は、男性の方がスキルアップや収入面を考えた転職が多いからです。
男性理学療法士は、20代ではスキルアップをするために何度か転職をする傾向にあります。また結婚後は、家族を養うために収入面を考えて転職する人が多いです。
その一方で女性理学療法士は、結婚や妊娠・出産で離職する人もいますが、半数以上は結婚や出産のタイミングでも転職しません。また男性と比較するとスキルアップや収入アップを考えて転職する人が少ないです。
こうした理由から、女性と比較すると男性理学療法士の勤続年数が少なくなっています。どちらにしても、理学療法士の平均勤続年数は6年前後と考えてください。
理学療法士の離職率は介護施設が高い
また理学療法士の離職率は、働く職場によって大きく変わります。医療機関と介護福祉領域だと、圧倒的に介護福祉領域での離職率が高いのです。例えば以下は、「第2回 理学療法士・作業療法士需給分科会」で報告された、理学療法士の施設形態別における離職率の資料になります。
出典:第2回 理学療法士・作業療法士需給分科会
一目見てわかるように、青色の医療機関と比較すると赤色で記された介護福祉領域の離職率が高いです。具体的には、医療機関における平均離職率が10.2%であるのに対して、介護福祉領域の平均離職率は18.8%と報告されています。中でも、訪問リハビリ事業所の離職率は37.4%と圧倒的に高くなっています。
訪問リハビリ事業所は個人経営である場合が多く、受け持ち利用者の数が多くなったり、サービス残業が横行したりなど、職場環境に不満を持ちやすいことが離職率の高さにつながっているのでしょう。
また介護分野だと高齢で症状が慢性化した利用者さんが多く、リハビリによる変化を感じにくいため、物足りなさを感じて転職する人もいます。その一方で高度急性期や急性期は、患者さんの回復が著しい上に、さまざまな疾患の患者さんを担当できるため、やりがいを感じやすいのです。
さらに規模が小さな介護施設であると、どうしてもスタッフ数が少ないために人間関係トラブルが生じやすく、それが原因で離職する人もたくさんいます。
このように、医療機関と比べると介護福祉領域の施設は離職率が高い傾向にあることを知っておきましょう。
理学療法士の離職率は高いのか?
それでは、理学療法士の離職率は他業界と比較して高いのでしょうか? 先の理学療法士・作業療法士需給分科会で報告された資料によると、理学療法士の離職率は「(医療機関の離職率10.2% + 介護福祉領域の離職率18.8%) ÷ 2 = 14.5%」です。
以下は、厚労省が報告している2017年雇用動向調査結果の概況の結果になります。
出典:2017年雇用動向調査結果の概況
2017年における日本全体の離職率は、14.9%と報告されています。理学療法士の離職率は14%であるため、全体平均的並といえるでしょう。また他業界といっても、業種によって離職率は大きく異なります。業種ごとの離職率を比較すると、理学療法士における離職率の現状が見えてきます。
以下は、2017年雇用動向調査結果の概況で報告されている、業界別の離職率になります。
出典:2017年雇用動向調査結果の概況
医療福祉業界の離職率は14.5%であり、宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業、その他サービス業についで、全体で4番目に高い離職率となっています。
医療福祉業界は、サービス残業や人間関係トラブルといった労働環境の悪化による離職が多いです。ただそれだけでなく、先に述べたようなスキルアップといったポジティブな理由の離職が多いことも、離職率が高くなっている要因になります。
このように理由はさまざまですが、理学療法士は他業界と比較しても離職率が高い職種だといえます。
理学療法士が離職・転職する理由
それでは、なぜ理学療法士は離職率が高いのでしょうか? 理学療法士の離職率が高いのには理由があります。転職は負担がかかる活動であるため、理由もなく離職することはないです。理学療法士が離職する理由は、主に以下の5つが挙げられます。
- 人間関係トラブルがあった
- 給料、年収が安い
- 忙しくて残業が多い
- スキルアップしたい
- キャリアアップしたい
以下に、それぞれについて解説します。
人間関係のトラブルがあった
理学療法士の離職理由で最も多いのは、人間関係トラブルになります。同僚や先輩、後輩と上手くいかずに転職する人が多いのです。
例えば1年目や2年目といった新人の頃は、先輩理学療法士から業務面だけでなく知識・技術面に関しても指導を受ける場面が多くなります。そうした中で厳しい先輩が指導者になると、それが嫌で離職を考える人もいます。
理学療法士の中には勉強熱心で、指導に熱が入り過ぎて厳しくなる人が多いです。自分自身も勉強熱心であれば問題ありませんが、そうでない場合は先輩と職場で会うことが非常にプレッシャーになってしまいます。
また他にも、理学療法士は医師や看護師、医療事務スタッフなどと連携を取らなければいけません。こうした他職種との人間関係でもトラブルが生じてしまうケースもあります。
人間関係トラブルによる離職はスタッフ数が多い大病院でも起こりやすいですが、小規模の介護施設でもあります。スタッフ数が少ないゆえに、一度関係が崩れると非常に仕事がやりにくくなって転職を考えるようになるのです。
このように、人間トラブルが原因で、離職・転職を考える理学療法士はたくさんいます。
給料・年収が低い
また給料や年収に不満を抱いて転職する人もたくさんいます。理学療法士の平均年収は約400万円ですが、職場によって差があるのが現状になります。その事実を実感して転職を考えるのです。
1年目の新卒で就職するときは、あまり年収を考えずに就職先を決める人が多い傾向にあります。給料よりも、興味がある分野に関連する病院や施設で働きたいという人が多いからです。ただ働き始めて1~2年して同級生などと給料の話をすると、自分の給料が低いことに気づいて転職を考えるようになります。
同じような仕事内容であっても、職場によって給料が全く異なるためです。例えば以下は、東京にある介護老人保健施設の理学療法士求人になります。
年収が320万円と提示されています。理学療法士の平均年収が400万円と考えると、非常に年収が低い職場であるといえます。これが同じ東京にある同じ介護老人保健施設であっても、職場によって年収は大きく異なるのです。
例えば以下は、東京にある介護老人保健施設の理学療法士求人になります。
この求人であれば年収は400万円以上になるのです。この求人は、運営している法人の規模が大きいために年収が高くなっていると考えられます。同じ都内で老人介護保険施設であるのに、年収が80万円も違ってくるのです。
新卒で働き始めた頃は気づかなかった事実を知って、転職を考えるようになります。こうした理由から、給料が安い職場ではどうしても離職率が高くなるのです。
忙しくて残業が多い
他にも、残業の多さで離職を考える理学療法士もたくさんいます。仕事が忙しいため、残業が日常的になって転職を考えるのです。
理学療法士の平均残業時間は、2019年賃金構造基本統計調査によって月に5時間と報告されています。
出典:2019年賃金構造基本統計調査
1ヶ月で5時間の残業であれば、ほとんど残業がないと考えて良いでしょう。しかし実際には、月の平均残業時間が5時間で終わる職場は少ないのが現状です。大半の職場はサービス残業をしておりその実態を報告していないため、データには反映されていないのです。
さきに述べたように、訪問リハビリ事業所などでは残業の多さが理由で離職する人もたくさんいます。こうした残業が多い職場であると、どうしても勤続年数が短く離職率が高くなるのです。
スキルアップしたい
先にも述べたように、理学療法士には人間関係や給料、残業などネガティブな理由だけでなく、スキルアップというポジティブな理由で転職する人も多いです。特に20代などの若いときには、転職していろいろな職場で働くことで経験を積んでスキルアップを図ります。
例えば病院に勤めていると、どうしてもスポーツ選手のリハビリに関わる機会は少なくなります。スポーツ選手は、整形外科病院や整形外科クリニックに通うことが多いからです。
そのためスポーツリハビリに関わりたいと考えて、病院から整形外科病院や整形外科クリニックに転職する人は多いです。
それぞれの病院や施設によって関わる患者さんの疾患や年齢層が違うため、理学療法士でも転職しなければ経験できないことがたくさんあります。こうした経験を積んでスキルアップをするために、転職する理学療法士も多いのです。
こうしたポジティブな理由での転職が多いことも、理学療法士の離職率が高い一つの要因となっています。
キャリアアップしたい
中には、どれだけ頑張っても役職につけずにキャリアアップできない職場もあります。そうしたキャリアアップのしずらさも、離職を考える一つの理由になるのです。
例えば、管理職者が自分と近い年齢の理学療法士であれば、なかなかキャリアアップするのは難しくなります。管理職のスタッフが転職しない限り、そのポストが空かないためです。そうしたときに、転職によってキャリアアップを考えます。
例えば以下は、大阪にある管理職候補の理学療法士求人です。
こうした求人であれば、キャリアアップして管理職になれる可能性が一気に高くなります。特にオープニングスタッフの募集であれば、なおさらです。そこで、管理職者候補の求人へ転職してキャリアアップを目指すのです。
もちろん管理職者候補の求人は数が限られており、簡単に見つからないのが現状です。ただ転職サイトに登録すれば、管理職候補の求人は比較的簡単に紹介してもらえます。
転職サイトを使って離職率の低い職場への転職を成功させる
なお、離職を考えたときは次の転職先を見つけなければいけません。当然ですが、転職先は離職した理由が改善される職場であることが必須です。
例えば、年収に不満を抱えて離職したのに転職先が同程度の年収であれば、また同じ理由で離職・転職を考えることになります。不満があって転職したのであれば、不満を解消できる職場へ転職することが必須です。
そのため「なぜ離職を考えたのか?」「どういう職場へ転職すればその問題は解消するのか?」を考えて転職先を選ぶようにしましょう。
ただ、転職活動をするときには注意が必要になります。求人からだけでは読み取れない情報がたくさんあるためです。例えば以下は、奈良県にある病院の理学療法士求人になります。
求人には「離職率の低さが自慢です」とあります。これだけ見ると、なんとなく「働きやすい職場なのだろう」と考えてしまいがちです。しかし実際には、なぜ離職率が低いのかは求人からは全く読み取れません。
高い待遇とあるので、給料や福利厚生は充実している可能性は高いです。そうであれば、収入に不満があった人にとっては良い職場だといえます。
その一方で、もしかしたら収入は高いけど残業が多い可能性もあります。そうなると、残業の多さに不満を抱えてやめた人にとっては、いくら年収が高くてもまた同じ不満を抱えることになるのです。
こうした場合、転職サイトに登録して担当のエージェントに相談することで問題は解決します。エージェントは求人情報に載っていない内情を知っていたり、わからないことは求人先に聞いたりして情報を手に入れてくれます。
求人先の細かい情報を知った上で転職先を決めれるので、ミスマッチが起こりにくくなるのです。
このように離職率が低い職場への転職を確実に成功させるためには、転職サイトを利用するようにしましょう。
理学療法士における離職の現状を知り、転職を成功させるには
理学療法士(PT)の離職率は、他業界と比較して高い傾向にあります。ただポジティブな理由での転職も多いため、一概に理学療法士の仕事自体に問題があるとはいえません。
また理学療法士でも、離職する理由はさまざまです。人間関係トラブルが理由の人もいれば、給料面に不満を抱えて離職する人もいます。ただどのような理由であっても、転職するときには慎重に転職先を選ぶようにしましょう。
理由があって離職したのに深く考えずに転職先を選ぶと、また同じ悩みを抱えることになってしまいます。そのためにも、上手く転職サイトを活用してミスマッチが起こらないようにすることが大切です。
こうした理学療法士の離職に関する現状を知り、ぜひ転職を成功させるようにしましょう。
リハビリ関係者が転職を考えるとき、転職サイトを活用するとより自分の希望に沿う求人を見つけることができるようになります。自分一人では頑張っても1~2社へのアプローチであり、さらに労働条件や年収の交渉まで行うのは現実的ではありません。
一方で専門のコンサルタントに頼めば、100社ほどの求人から最適の条件を選択できるだけでなく、病院や施設を含め、その他企業との交渉まですべて行ってくれます。
ただ、転職サイトによって特徴が大きく異なります。例えば、電話だけの対応で素早さを重視する会社があれば、面接まで同行することで難しい案件への対応を得意としている会社もあります。他には、大手企業に強みを発揮する会社があれば、地方求人を多く保有している会社もあります。
これらを理解したうえで専門のコンサルタントを活用するようにしましょう。以下のページで転職サイトの特徴を解説しているため、それぞれの転職サイトの違いを学ぶことで、転職での失敗を防ぐことができます。
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