年度途中の転職は「いい職場が無い」? PT・OT・STが知っておきたい転職市場の現実

「今の職場、もう限界かもしれない……」

そう感じながらも、こんな不安が頭をよぎっていませんか?

「年度途中に出ている求人って、どうせ誰も来ないブラックな施設ばかりなんじゃ……だったら4月まで耐えた方がいいのかな」

その気持ち、よくわかります。医療職はとくに「年度」への意識が強いですし、仲間に迷惑をかけてしまうという罪悪感も重なって、なかなか動けない方が多いのが現実です。

でもこの記事では、少し立ち止まって一緒に考えてみたいことがあります。「年度途中の求人=ブラック」というのは、本当にデータが示す事実なのか?ということです。

結論を先にお伝えすると、事実とは言えません。 根拠を順番に見ていきましょう。

目次

まず知っておいてほしいこと:PT・OT・STの求人は、1年中存在しています

厚生労働省「一般職業紹介状況」のデータによると、PT・OT・STが含まれる「医療技術者」の有効求人倍率は、令和8年3月時点で3.19倍です(*1)。

有効求人倍率が1倍を超えるということは、求職者1人に対して求人が1件以上ある状態です。全産業の平均が1.25倍(2024年平均)なのに対して、医療技術職はその2倍以上。これは4月だけの現象ではなく、6月でも9月でも12月でも、同じように求人が存在しています(*1)。

また、マイナビの調査によれば、医療・福祉業界の求人件数は2018年を100%とすると、2024年3月時点で121.1%にまで上昇しています(*3)。つまり、求人の絶対数自体も増えている。

「年度途中だから求人がない」は、数字で見ると正確ではないんです。

「年度途中の求人=ブラック」は、なぜ生まれた誤解なのか

年度途中に求人が出る理由は、実にさまざまあります。

出典:厚生労働省「雇用動向調査」令和6年より

ポジティブな理由・やむを得ない理由が多数ある

新規施設・部門のオープン
訪問看護ステーション、通所リハ、障害者支援施設など、医療・福祉系の施設は新設が継続しています。開設に合わせた採用は、年度関係なく行われます。

産休・育休に伴う欠員補充
女性の割合が高い医療福祉業界では、これが頻繁に起きます。注目してほしいのは、産休・育休をきちんと取得できている職場だからこそ、その補充が必要になるという事実です。これは「働きやすい職場の証拠」とも言えます。

配偶者の転勤・家庭の事情による退職

信頼されていたスタッフが配偶者の転勤でやむなく退職するケースは、どんな優良施設でも起こります。その後任を探しているだけで、施設の問題とは無関係です。

事業拡大・増員
稼働が順調な施設が体制を強化するため、追加採用を行うことがあります。

もちろん、慢性的な人手不足で常時募集しているブラックな施設も存在します。ただ、それは「混在している」のであって、「年度途中=すべてブラック」とはなりません。

「4月まで待つ」ことのリスクを、真剣に考えてほしい

4月を待つことのデメリットは、あまり語られません。でも実際には、かなり大きなリスクがあります。

心身の健康は、待ってくれない

「あと数ヶ月の辛抱」という言葉の重さを、医療職としての目線で考えてみてください。慢性的なストレスや燃え尽き状態が積み重なると、適応障害やうつ状態に移行するリスクがあります。

そうなると、転職活動をする気力・体力自体がなくなり、「働けない期間」が生まれます。「あと数ヶ月」が「あと数年の回復期間」になるリスクは、決してゼロではありません。

4月は、ライバルが最も多い時期でもある

「4月採用を狙おう」と考えるのはあなただけではありません。同じように「次年度から」と考えている転職希望者が一斉に動き始めます。しかも大規模病院や人気施設では、翌年4月入職向けの採用活動を7〜9月にはすでに開始しています。

「来年4月にゆっくり探そう」と思っている間に、条件の良い求人の選考が静かに進んでいることがあります。

逆に、年度途中に動くメリットもある

転職希望者が少ない時期は、採用担当者に丁寧に向き合ってもらいやすくなります。また、「今すぐ即戦力として来てほしい」という施設のニーズに合致するため、給与交渉が有利に進みやすい側面もあります。

PT・OT・STの転職先は、実は「業界内の横移動」がほとんど

ここで一つ、よくある誤解についてお伝えしたいことがあります。

整体、保険会社、医療機器メーカーやその他の一般企業など「転職=異業種へ」というイメージを持っている方もいるかもしれませんが、データはそれと異なることを示しています。

日本作業療法士協会の統計によると、OTの71.5%は医療機関(病院・診療所)で勤務しており、医療機器メーカーやスポーツ業界など業界外への転職は少数派です(*4)。PTも同様に、病院・関連施設での勤務が圧倒的多数を占めています(*5)。

つまり、PT・OT・STの転職の主流は

  • 急性期病院 → 回復期病院・地域包括ケア病棟
  • 病院 → 訪問看護・訪問リハビリ
  • 老健・特養 → クリニック・デイケア
  • 大規模施設 → 小規模・地域密着施設(またはその逆)

これは多くの人が働く環境・対象・ライフスタイルの変化に合わせてキャリアの積み直しを行なっていることをあら表します。そして業界内であれば、これまでの経験と国家資格という強みが最大限に活きます。

では、健全な求人とそうでない求人をどう見分けるか

年度途中にも良い求人はある——とはいえ、見極める目は必要です。以下のチェックポイントを意識してみてください。

① 同じ求人が長期間掲載されていないか
欠員補充や事業拡大であれば、一般的に比較的短期間で採用が決まります。数ヶ月以上、内容が変わらず掲載され続けている場合は理由を確認する価値があります。

② 採用の背景を直接聞く
「今回の採用はどのような背景でしょうか」と聞くことは、むしろ仕事への真剣さを示す質問として捉えられます。「産休代替」「増員」「新規事業」など明確な回答があれば安心材料になります。

③ 在籍スタッフの継続状況を確認する
「リハスタッフの中で、3年以上勤務している方はどのくらいいますか」という質問は、離職率を間接的に確認する有効な方法です。

④ 有給消化率・残業時間を具体的な数字で確認する
「取りやすい環境です」という言葉より、「平均◯日」「残業は月◯時間程度」という具体的な数字の方が信頼できます。数字を出せない場合は追加確認を。

一人で判断するには、限界がある

ここまで読んで「自分で確認できることもあるな」と思っていただけたなら、幸いです。でも正直にお伝えすると、求人票から読み取れる情報だけで職場の実態を判断するのは難しいのも事実です。

どんな施設も、求人票には良い面しか書きません。実際の人間関係、管理職のスタイル、残業の実態、法人の経営状況——こういった情報は、表に出てこない。

リハビリ職専門の転職エージェントが役に立つのは、まさにここです。支援実績を通じて、施設ごとの内情を蓄積しています。「この施設は事業拡大中で即戦力を求めているが、スタッフの定着率は高い」「こちらは離職が続いている背景がある」——こういった情報は、個人では調べようがありません。

大切なのは、今すぐ転職を決断しなくていいということです。 まず登録して、「自分の希望条件に合う求人が今の市場に存在するかどうか」を確認するだけでも意味があります。

情報がない状態で「耐える」という判断と、市場の実態を把握した上で「今は動かない」という判断は、まったく違います。後者の方が、あなたの人生にとってずっと安全です。

まとめ

  • PT・OT・STの有効求人倍率は年間を通じて2〜3倍台を維持しており、年度途中でも健全な求人は存在する(*1)
  • 年度途中の求人には、産休代替・新規施設・事業拡大など、職場環境とは無関係な理由が多数含まれる(*2)
  • PT・OT・STの転職の主流は「業界内の横移動」であり、急性期→回復期・訪問・地域など、国家資格を活かしたキャリアの継続が現実的な選択肢(*4・*5)
  • 4月まで耐えることは、心身の健康リスクと「ライバル増・好条件求人の減少」という2つのリスクを伴う
  • 良い求人の見極めには限界があり、内部情報を持つ専門エージェントの活用が有効な手段になる

あなたのキャリアと健康を守ることは、患者さんを守ることにもつながります。まず情報を持つことから、始めてみてください。

参考資料

  1. 厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」
  2. 厚生労働省「雇用動向調査」令和5年令和6年
  3. マイナビキャリアリサーチLab「医療・福祉レポート(2024年5月)」
  4. 日本作業療法士協会「2024年度会員統計資料」
  5. 厚生労働省「理学療法士・作業療法士の需給推計について」(令和元年
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