PT・OT・STが認知症患者と関わる際のポイント

 

理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などのリハビリ職者が転職する職場には、整形外科クリニックや総合病院、デイサービスなどさまざまなところがあります。

 

当然、場所によって求められる役割は異なります。ただ、どのような職場であっても、リハビリ職者であれば共通して持っていた方が良い知識があります。その一つが「認知症」に関するものです。

 

どのような職場であっても、リハビリ職者は認知症患者さんと接する機会が多くあります。また、認知症を患う人は年々増加しているため、リハビリ職者が認知症に関する基本的な知識として持っていることは、必須になります。

 

そこで今回は、「PT・OT・STが認知症患者と関わる際のポイント」ついて述べます。

 

認知症の基礎知識

認知症とは、脳や身体の疾患が原因で記憶や判断力などの障害が起こり、社会生活に支障が出ている状態のことを指します。

 

そして、認知症の原因となる「脳や身体の疾患」には200種類もの疾患が含まれています。このうち、一般的に罹患率が高いとされている病気としては、アルツハイマー型とレビー小体型、血管性認知症、前頭側頭型が挙げられます。

 

その他の認知症原因疾患には、以下のような例が挙げられます。

原因疾患

具体例

脳血管障害(脳血管性認知症) 脳出血、脳梗塞
神経変性疾患 アルツハイマー型認知症など
非アルツハイマー型認知症 前頭側頭型認知症、辺縁系神経原線維変化性認知症、進行性核上性麻痺、   ハンチントン病など
内分泌、代謝性中毒性疾患

甲状腺機能低下症、下垂体機能低下症、ビタミンB12欠乏症、糖尿病、
 高血圧症、高脂血症、アルコール脳症、薬物中毒など

感染性疾患 クロイツフェルト・ヤコブ病、亜急性硬化性全脳炎など
腫瘍性疾患   脳腫瘍、髄膜癌腫症など
外傷性疾患  慢性硬膜化血腫、頭部外傷後遺症
その他 正常圧水頭症、多発性硬化症、神経ベーチェット病、シェーグレン症候群など

 

認知症の症状

認知症の症状は、大きく「中核症状」と「心理・行動症状」の2つに分けられます。以下にそれぞれの症状における特徴を記します。

 

中核症状

記憶障害、見当識障害、判断力の低下、実行機能障害失語、失認、失行

 

心理・行動症状(BPSD)

抑鬱、幻覚、睡眠障害、食行動の異常、不安・焦燥妄想、暴言・暴力、徘徊

 

このように、認知症になると、さまざまな症状が出現します。また、認知症によって現れる症状には、原因疾患によって特徴があります。以下に、認知症を引き起こす代表的な病気に関して、それらの違いを原因とともに説明します。

 

 

原因

特徴的な症状

アルツハイマー型

大脳に「アミロイドβ」というたんぱく質が蓄積する。さらに「タウたんぱく質」が繊維化し、
脳の神経が死滅する。

記憶を司る海馬領域から破壊されるため、 初期から記憶障害がみられる
その他、見当識障害や実行機能障害、 失行・失認、人格の変化、抑鬱などが進行とともに出現する。

レビー小体型

 「αシヌクレイン」というたんぱく質を主成分とするレビー小体が大脳の広範囲に出現し、
大脳辺縁系の神経細胞が死滅する。

初期に記憶障害に加えて幻覚や妄想が出現する。また、パーキンソンニズム(歩行障害、動作緩慢など)が見られる。
その他、視覚認知障害・構成障害、 レム期睡眠行動異常症、抑鬱、自律神経症状なども認められるが、これらは日によって 症状が変化する。

血管性認知症

脳梗塞や脳出血など、脳卒中の発作によって脳が障害される。 原因が明確なため、発作時期は比較的はっきりとしており、脳卒中を繰り返すたびに症状が進行する。初期は記憶障害よりも実行機能障害が目立つ。

前頭側頭型

原因ははっきりしないが、脳の前頭葉と側頭葉に萎縮が起きる。

記憶障害はそれほど目立たないが、早期から反社会的で自己中心的な行動が見られたり、同じパターンを繰り返したりする。

 

 

このように、原因疾患の違いによって、症状の出方には特徴があります。実際の臨床においては、これらの原因疾患が混合している場合や、進行とともに上記以外の変化が出現するケースもあります。

 

さらに、症状の出方は「患者さんの性格や生活状況などで変化する」ということは、PT・OT・STとして知っておきたい知識の一つです。

 

認知症に限らず、どの病気に対しても同様ですが、患者さんのリハビリを行う際は、患者さんを「疾患」でみるのではなく、患者さんのバックグラウンドも含めて「一人の人間」として捉え、尊重の気持ちを持つことが大切です

 

特に、認知症患者さんのリハビリでは、身体機能よりも心理面へのアプローチが必要なケースも多いです。そのため、患者さんの性格や家族内での位置などを理解しておくことが大切です。

 

それらのバックグラウンドを把握していないと、リハビリの効果が低くなってしまう可能性があるので十分注意しなければいけません。

 

PT・OT・STにおける認知症との関わり方

既に述べたように、認知症の症状は、大きく中核症状と心理・行動症状の2つに分けられます。そして、PT・OT・STとして認知症患者と関わる場合には、それぞれの症状によって関わり方は異なります。

 

そこで以下に、中核症状と心理・行動症状に対する関わり方について記します。

 

中核症状に対して

認知症患者さんの症状は、中核症状と心理・行動症状に分けられます。

 

中核症状とは、脳細胞が壊れることで直接起こる症状を指します。例えば、記憶障害や見当識障害、理解、判断力の低下などは、中核症状になります。

 

一方で心理・行動症状とは、中核症状に、もともとの性格や環境、人間関係などの要因が複雑に絡み合うことで起こる症状をいいます。例えば、「うつ状態といったような精神症状や、人とのコミュニケーションに問題が生じることで外出ができなくなる」といったような行動上の問題のことが例として挙げられます。

 

中核症状に対しては、薬物療法での治療が主になります。薬を使用することで、現れている症状を軽減させます。

 

また、薬物療法に加えて有酸素運動や回想法、認知リハビリテーション、幻術療法などの非薬物療法を併用することも有効です。非薬物療法によって症状をさらに軽減させたり、進行を遅延させたりすることが期待できます。

 

PT・OT・STが関わることができるのは、この非薬物療法による治療になります。

 

その人の体力に合わせた運動負荷を設定して運動を指導したり、認知力に合った学習課題を用意して一緒に問題を解いたりします。そうすることで脳を刺激し、脳の衰えを抑制することができます。

 

心理・行動症状に対して

一方、心理・行動症状に対しては、周囲の人とのコミュニケーションが大切になります。コミュニケーションの取り方次第では、患者さんの不安感や焦燥感を大きくし、症状を悪化させる可能性があります。

 

そのため、PT・OT・STは、認知症患者さんとの関わり方を把握し、まずは自分自身が注意しアプローチする必要があります。

 

以下に、認知症患者さんに対してリハビリを行う際の注意すべき点について述べます。

 

・好きなことに取り組む
・できることに取り組む
・本人のペースに任せる
・できなくなったらやめる

 

認知症患者さんは嫌なことに無理矢理取り組むと、怒りや不満が生じます。また失敗すると心が傷つき、うつ状態や意欲の低下につながってしまいます。

 

つまり、認知症患者さんのリハビリを行う際は患者さん本人が失敗なく、楽しく続けられること」が大切です。また、進行に合わせて方法を見直し、患者さんが無理なく行える環境を整える必要があります。

 

さらに、PT・OT・STが家族や周囲の人にも協力してもらえるように促すことも大切です。

 

実際に、家族に対して認知症に関する知識や患者さんの状態を説明し、注意することなどを指導します。そうすることで、リハビリ中だけでなく、生活している時も患者さんの不安感や焦燥感が強くなることを抑えられます。

 

PT・OT・STが認知症患者に関わる際のポイント

PT・OT・STが認知症患者さんと関わる際には、対象となる症状が、中核症状と心理・行動症状で対応の仕方が異なります。ただ、どちらであっても、共通して注意すべきポイントがあります。

 

そこで以下に、認知症患者さんと関わる際のポイントについて記します。

 

認知症は早期の対応が大切

認知症の患者さんに限ったことではありませんが、患者さんと接する際は、性格や生活状況を捉え、尊重の気持ちを持つことが大切です。その中でも、特に認知症患者さんは、心情を思いやることがリハビリを行う上では必須になります。

 

PT・OT・STは、認知症患者さんの心情を思いやることで、患者さんや家族の立場に立ち、アプローチを行うことができます。

 

認知症患者さんには、自ら希望して病院を受診する人は少ないです。多くの場合は、家族に勧められて初めて病院に行きます。

 

認知症になると、初期の時点では大半の人が「自分が今までの自分ではない」と自覚しています。しかし、「認知症は治らない」という考えを持っているため、「もし、診察で認知症と診断されたらどうしよう」という不安や恐怖が先行し、受診することに躊躇してしまいます。

 

確かに、認知症は完治することは、ほとんどないと言われています。ただ、なるべく早期に適切な治療を受けることで、進行を遅らせることができます

 

そうは言っても、「自分が認知症になった」と受け入れることは、なかなか容易にできるものではありません。そのため、治療が遅れてしまう場合もあります。

 

認知症患者さんの心情

既に述べたように、認知症の治療は進行を遅らせるものです。そのため、治療を開始した後も、完全に症状が改善するわけではなく、認知症患者さんは時に次のようなことを経験します。

 

例えば、家族と約束していた大事な用事を忘れてしまい、約束の時間になって、いきなり家族に怒られたとします。加齢に伴うただの物忘れであれば「あ〜そうだった、すまない」と謝ります。この場合は、家族に言われることで、約束していたことを思い出します

 

一方、認知症の人は、約束していたこと自体を忘れているので、全く身に覚えがありません。中には、覚えていないにも関わらず、繕って謝る人もいます。

 

こうした状態を何度か繰り返すと、徐々に「自分はどうしたのだろうか」「忘れてしまっていることが他にもあるのではないか」「周りに迷惑ばかりかけてしまって申し訳ない」と自信をなくし、常に不安な気持ちで生活を送らなくてはいけなくなります。

 

このように、認知症患者さんは、私たちの想像よりはるかに大きい不安や恐怖を感じながら生活しています

 

リハビリを行うということは、患者さんの心身に寄り添い、共に治療していくことです。どのような病気の人に対しても同様ですが、特に認知症患者さんに対してリハビリを実施する場合には、治療を行う前に、まずは相手の心情を考え、汲み取ることが大切になります。

 

今回述べたように、PT・OT・STは認知症患者に対して、主に「中核症状」と「心理・行動症状」の2つの面からアプローチすることができます。

 

また、認知症患者さんに対しては、特に相手の心情を考えて接することがポイントになります。

 

PT・OT・STであれば、どのような職場であっても認知症の患者さんに対してリハビリを行う可能性はあります。リハビリ専門職として、今回述べた内容だけでも把握しておくようにしましょう。



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