言語聴覚士(ST)に必要な能力:観察力

 

理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などのリハビリ職者にはそれぞれの職種に必要な能力があります。特にリハビリに関連した専門的な知識や技術を持っていることは必須です。

 

また、リハビリ職者は、対象とする人の多くが障害を持った人になります。そのため、専門的な知識に加えて、相手の気持ちを理解する力が必要になります。

 

そのような能力を持っていると、患者さんのリハビリに対するモチベーションを大きく変えることができます。その結果、リハビリの進行具合もスムーズになり、患者さんの社会復帰も円滑に進むようになります。

 

そこで今回は、リハビリ専門職全般に必要な能力と、その中でも特に言語聴覚士が求められるものについて述べます。

 

リハビリ職者に必要な能力

リハビリ関連職が対象とする人は、どのような状態であれ、何らかの障害を抱えている人になります。そのため、ほとんどの人が不安を抱えています。

 

それは、「スポーツに今後復帰できるのだろうか」「1人で生活できるようになるのだろうか」「車いす生活にならないだろうか」といったように、悩みの種類は、人によってそれぞれ異なります。しかし、共通しているのは、何かしらの不安や悩みを抱えているということです

 

そのため、リハビリ職者には、相手の気持ちを読み取る能力が必要になります。患者さんの気持ちになって考えることで、その時にかける言葉が変わります。

 

話しかける言葉一つで、患者さんの将来に対する不安や、リハビリに対するモチベーションなどは大きく変わります。

 

例えば、あなたがサッカーをしていて、試合中に骨折をしたとします。あなたは、今後もサッカーを続けたいと考えています。そのような時に、リハビリを担当した療法士から、最初に「ひどい状態ですねね。サッカーの復帰は難しいです」という風なことを言われたらどのように感じるでしょうか。

 

おそらく、希望を無くし、リハビリに対する意欲もわかないのではないでしょうか。そのような状況では、リハビリも上手くいかないため、余計にスポーツに復帰するのが難しくなります。

 

このような場合は、例え骨折の程度がひどくても「状態は良くないかもしれないけど、早く復帰できるように一緒にがんばろう」や「今までも同じような患者さんを経験したことあるけど、その人はスポーツに復帰して今も楽しんでいるよ」など、希望を持たせるような言葉かけを行うことが大切です。

 

過剰な期待を持たせるような言葉かけは注意しなければいけませんが、間違っても希望を砕くようなことだけは言わないようにしなければいけません。

 

また人によっては、厳しいことを言ったほうが、モチベーションが高まる人もいます。そのような場合は、多少のキツイ言葉をかけることは有効です。

 

しかし、この見極めはとても難しいです。あなたが、「厳しいことを言ったほうがよい患者さん」だと思っていても、強く言われることで、とても落ち込んでしまうこともあります。そのような人に、強い言葉をかけると、逆効果になります。

 

以上のような理由から、リハビリ職者は、相手の気持ちを読み取る能力がとても必要だといえます。

 

言語聴覚士には観察力が必要

言語聴覚士が関わる障害としては、「失語症」「摂食、嚥下障害」「高次脳機能障害」の3つが主になります。

 

この3つに共通していることは、「患者さんの意志と関係なくなってしまった状況」ということです。これは、理学療法士や作業療法士が担当する患者さんも同様ですが、その中でも言語聴覚士が対応する患者さんは特に、「コミュニケーション」に障害を持った人が多いです。

 

そのため、患者さん自身が、思い通りにできないことにもどかしい気持ちをもったような状態でリハビリを行います。

 

また、患者さんは、今の状況に絶望的な気分になり、精神的にもリハビリをするような状態ではないことがほとんどです。

 

このようなことから、言語聴覚士は、そのような障害に対する専門的な知識が必要なことはもちろんですが、それ以上に観察力や想像力が大切になります。コミュニケーション能力が障害されているため、患者さんのちょっとした変化を感じ、読み取ることで、患者さんの気持ちや状態を把握しなければなりません

 

特に、その人の身体、精神状態に合わせて、的確に状況を伝える表現力は、言語聴覚士にとって、とても大切な能力です。同じ言葉でも、言い方1つで、患者さんのモチベーションは大きく変わります。

 

常に冷静に患者さんと接しながら、治療を進めていき、適切な人間関係を作っていくことが大切です。そのためには、まずは患者さんの気持ちや、心の傷を受け止める能力が重要です。そのことを理解して始めて、患者さんとの関係が形成されます。

 

このような能力は、実際に患者さんと接することで形成されていくものです。そのため、毎日実践を続けていることが大切です。

 

このような、細かいことに対する気遣いや優しさ、包容力や豊かな感受性といった能力は、男性よりも女性の方が生まれつき持っているものです。そのことも関係しているのか、言語聴覚士の資格を持っている人の8割は女性です。

 

そのため、言語聴覚士は、特に女性に向いている仕事と言ってもよいのかもしれません。

 

今回述べたように、患者さんの気持ちを読み取る能力は、理学療法士(PT)や作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などのリハビリ職者全般に必要な能力です。

 

その中でも、言語などのコミュニケーション能力が障害された人と接する機会が多い言語聴覚士には、観察から患者さんの状態や気持ちを読み取る力が強く求められます。このような能力は、女性が得意とするものですが、日々の実践で身に付いていくものでもあります。

 

特に言語聴覚士の方は、このようなことを意識して仕事を行うと、より良いサービスを患者さんに提供できるようになるはずです。



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